皆さんこんにちは♪今日も素敵な読書ライフを楽しんでいるでしょうか?
今日紹介する書籍はケリー・マクゴニガルさんの書かれた『スタンフォード式 人生を変える運動の科学』です。
この本を一言で言うと『人は運動をする事で幸せを感じられる』という事がわかる本です。
私は体力の維持やダイエット、健康投資などを考えて、週に1〜2回のジョギングをしています。しかし走る前はすごく嫌だなぁとか、めんどくさいなぁ…と考えてしまいます。
しかし、いったん走り始めると嫌だった気持ちがすぐになくなり、頭の中がクリアになっていく事がわかります。
走り終わる頃には、キツイけどなんだか爽やかな気持ちになっていて、走り終わった後も、なんとも言えない充足感のようなものを感じています。この感覚はなんだろうなと心のどこかでずっと考えていたのですが、今回本書を読む事で、なんでそういう感覚になるのかが、なんとなくわかりました。
なので、今回は本書について面白かった、勉強になったなと感じたことについて3つに絞って、簡単に解説していきたいと思います。
目次
- 著者と本の概要
- 持久力系の運動が心と体に良い理由
- 脳のスイッチを切り替える
- メンタルヘルスへの影響
- まとめ
著者と本の概要
著者の紹介
- スタンフォード大学の心理学者。
- ボストン大学で心理学、マスコミュニケーションを学び、スタンフォード大学で博士号(健康心理学)を取得。
- 心理学、神経科学、医学などの最新の知見を用いて、人々の心身の健康や幸福、成功、人間関係の向上に役立つ実践的な戦略を提供する『サイエンス・ヘルプ』のリーダーとして世界的に注目を集める。
- メディアでも広く取り上げられ、フォーブスの『人々を最もインスパイアする女性20人』に選ばれている。
- TEDプレゼンテーション『ストレスと友達になる方法』は2200万回超の再生回数を記録。
- 大学の講義や国内外での講義活動、ダンス、ヨガ、グループエクササイズの指導を長年行っている。
- 著書に『スタンフォードの自分を変える教室』、『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』(ともに大和書房)などがある。
本書の概要
- 本書は、運動というテーマを軸にして話が展開されています。体を動かすことで人にどのような効果が現れるかを身体面や精神面に起こる影響を考察しています。
- 運動をする事で、人とのつながりを作るきっかけになることや、うつ病や不安症に対する効果も高いことなどに触れています。
- 現代社会で問題となっている『社会的な孤独』を防ぐ効果もあるといいます。
- 運動をするということは人が人らしく生きる為に必要なことだという事が本書を読む事で実感できます。
- 本書は色々な方のインタビューを基にして、なぜ運動すると変化が起こるのか?という疑問を動物実験などを踏まえて説明していくという流れになります。
- 年齢や置かれている環境が違う人たちが、運動を通して希望や喜びを見つけていく話が多く、読んでいて運動することのメリットが多いことに驚きましたし、自分も体を動かしたい!と思わせてくれる内容だったと思います。
- 今日は本書の中から3つの内容について触れていこうと思います。
本書をオススメしたい人
- 運動不足だと感じている人
- なにをやっても楽しいと感じない人
- 落ち込んだりやる気が起きない人
- 運動の効果について知りたい人…などです。
持久系の運動が心と体に良い理由
皆さんは1日にどのくらい体を動かしているでしょうか?最近はデスクワークが増えた事で、運動不足を感じる人も増えていると思います。私はというと30歳を過ぎた頃から運動不足を感じらようになり、3年ほど前から健康資産を守るという意味合いで自分なりに体を動かすようにしています。
そうした中で、自分の精神面に少し変化があることに気がつきました。それは、以前よりも少し社交的になれていることと、考えが少しポジティブな方向になっている事です。
これが運動をしてるからなのか、年齢を重ねて考え方が変わってきたからなのかわからなかったですが、本書を読んで、運動による効果なのかもしれないと思えました。
運動する事で『幸せホルモン』と呼ばれるエンドルフィンが出ることや、その他の多くの脳内化学物質が活性化するようです。
そのおかげでエネルギーが湧いてきたり、不安が和らいだり、人との絆が深まるなどの色々な効果をもたらしてくれるようです。また、うつ病や不安症などを防ぐ効果もあるようです。
神経学者のダニエル・ウォルパート氏が『人間の脳の最大の目的は、体を動かすことだ。動くことこそ我々が世の中と関わるための唯一の手段なのだ』といっています。
体を動かすことで人は喜びを感じるようにできているようです。その一例として、ランナーズハイがあるかと思います。これはある程度連続した運動をしている最中に起こる現象として知られており、これを体験した人は『気持ちが前向きになる感覚、なんとも言えない幸福感』などポジティブな気持ちになるような体験をしています。
ランナーズハイに関しては、歴史を遡り人類の祖先が狩猟採集生活をしていた事と関係があるみたいです。
人がまだ狩猟採集をしていた時代では、栄養源が毎日摂れるかわからない状況では【エネルギーがゼロになる=死】を意味します。
だとしたら、なるべく疲れないように動かないという選択肢になりそうですし、空腹を満たすだけのために朝から晩まで木の実を取るために木を登ったり、獲物を取るために走り回るなど1日中動き回る生活は苦痛でしかないと考えられます。
そこである方が研究を行い、持続的な運動をする事で『内因性カンナビノイド』という脳内物質が出ていることを突き止めます。この脳内物質によって、人は運動をするのではないかと推察できました。
しかし、この内因性カンナビノイドが出るためには条件があります。それは『20分以上のややキツイ運動』をすることです。
この条件を満たすことで、ハイと呼ばれる状況に近づいていきます。これは走ること以外でも現れるので、走るのが苦手な人でも体験した事がある人もいるようです。
中強度の運動を継続すれば良いので、サイクリングでも傾斜が強いところでのウォーキングでも、登山などでも内因性カンナビノイドの濃度が上昇する事がわかっています。
これは、体を動かす事で苦痛を感じないように、脳が自分にご褒美をあげる事で、狩猟や採集を続けられるように進化したものだと考えられています。これがランナーズハイの現代の考え方になります。
また、内因性カンナビノイドには他の作用もあります。それは不安を和らげて、明るい気分になる。人との繋がりを感じやすくなるなどの作用です。
人類の先祖が生き残れてきた理由として、これらの作用も大いに役立ったようです。先祖の人たちは走る能力だけで生き残ってきたわけではありません。最も画期的な行動だったのは分かち合いができた事と言われています。
狩猟採集活動では、狩猟を得意とする人もいれば、手堅く木の実などを集める人など役割は様々です。そして、1日の終わりに収穫物をみんなで集めて全員に行き渡るように分け合います。この分かち合いが上手な集団は生存確率が高かったようです。
そのため、人は走る事と同じくらいに人とのコミュニケーションを取れるように進化しているのです。協力しあう事で、脳内の報酬系と言われるドーパミン、エンドルフィン、内因性カンナビノイドなどの脳内化学物質が、一気に分泌されます。これを協力がもたらす高揚感と言われるものです。
協力して何かを達成する事で喜びや興奮を感じるように人は出来ているのです。その最たる例としては集団で行うスポーツなどがわかりやすいかと思います。
これはアマチュアやプロを問わず、つらい練習や悔しい経験、勝った時の喜びなどを分かち合う事は、脳内化学物質がたくさん放出される事で、一体感や喜びなどを感じるのではないでしょうか。
脳内化学物質で喜びや快楽などと聞くと、薬物を連想する人もいるかもしれません。
実際に乱用薬物のほとんどはエンドルフィン、セロトニン、ノルアドレナリンなどの高揚感をもたらす脳内化学物質を増加させる事で依存しやすくなっています。
また、カンナビノイドは主に3種類ほどあり、植物性・化学性・内因性に大別されます。その中で植物性カンナビノイドは大麻草に含まれる成分でもあるので、内因性カンナビノイドと作用が似ているのも確かです。
しかし、運動で出る内因性カンナビノイドと植物性カンナビノイド(薬物)には重要な違いがあるといいます。
薬物の場合は使った瞬間から快楽を感じ、簡単で手っ取り早く報酬が得ららやすく、そして依存性も高いです。
その一方運動に関しては、週4回の運動を6週間程度行うことで徐々に運動が楽しくなってくるといいます。変化がゆっくり起こってくるのです。
薬物は脳を壊してしまいますが、運動では脳が自分にご褒美という意味で自分の体から作るカンナビノイドを使うので、副作用や脳の機能を損傷するような事はありません。
それどころか、頭が冴えて気分も良くなり、仕事や勉強のパフォーマンスも上がるのです。体に悪いことはなにもありません。
むしろ体を動かすことは本来の人間の生活に近づく行動ですから、体を動かす事で本来の機能を取り戻すという事になります。
同じ脳内物質がを出す行動でも、やり方次第で良くも悪くもなりえます。自分を壊して幸福感を得るよりも、運動をして健康的に幸せを感じられたらと思いました。
脳のスイッチを切り替える
皆さんは、体を動かしたりした時に気分がスッキリなって頭のモヤモヤが軽くなった!と感じたことはありませんか?
実はこれも運動をする事で得られる効果なのです!人の脳は仕事などで集中力が必要な時と、安静時に働いている脳の場所が変わってきます。
休んでる時には脳も休んで使われてないと感じる方もいるかと思いますが、全然そんな事はありません。使ってる場所が違うだけで、脳は色々な箇所が活性化されている事がわかっています。
そしてこれは、個人差はあるものの全ての人で同じような脳の働きをすることもわかってきています。神経科学ではこのような脳の状態を『デフォルト』と呼んでいます。
人の脳は安静状態で放っておくと、想像上の会話を繰り広げたり、過去の経験を反芻したり、将来のことを考えたりします。
特に自分自身のことや人生における目標、人間関係などについてはしつこく考えるという傾向にあるようです。そして、ほとんどの人はデフォルト状態の脳ではネガティブ・バイアスがかかる事が多いと言われています。
過去の辛い経験を何度も思い出したり、自分自身と他人を比較したり、心配事についてしつこく考えたりする。
何かに集中している時の脳は自分の外側に意識を向けた状態になりますが、安静にしてる時に脳はデフォルト状態になります。
普通の人では無意識にこのスイッチを切り替えながら生活できていますが、うつ病や不安症の人の場合は、この切り替えがうまくいかない人が多いようです。
集中したり他の人に注意を向ける事が難しくなるだけでなく、不眠になることもあるようです。不安なことをすぐ考えたり、自己批判を繰り返す人の脳では、「そうだ、もっと考えろ!」と脳があおり始めます。
過去のことを考えたり、悩んだり、自己批判をすることで何かいいこと(=報酬)がありそうだと脳が思い込んでいる状態になるようです。
報酬が欲しいと脳はまたぐるぐると考えてしまい、この思考から抜け出せないという状況になっていくといいます。
デフォルト状態の頭の中を落ち着かせるために最も効果的なことの1つは『瞑想』になります。
呼吸に集中したり、瞑想したり、マントラを唱えることは、デフォルト状態の脳の活動を鎮める効果がある事が脳画像検査によって明らかになっています。
そして、もう1つ本書で紹介されている方法が『グリーン・エクササイズ』と言われるものです。
これは自然を感じられる中で運動を行うといいもので、瞑想のようにトレーニングを積むという必要はありません。
ある実験で、交通量の多い場所をウォーキングするグループと、景色の良い道をウォーキングするグループの安静時の脳の活動を測定するというものがありました。
その結果として、景色の良い道をウォーキングしたグループにおいて、自己批判や悲嘆や反芻と関連がある『脳梁膝下野』の活動が低下している事がわかりました。うつ病の人に関しても安静時においてこの領域が活発だという事がわかっています。
この実験から、自然の中を歩くだけでデフォルト状態の頭の中を非活性化できるという事がわかりました。
自然に囲まれた状態で夢中になっている時に、脳は『ソフト・ファシネーション』という状態になっています。
この状態は『今、この瞬間』に対する意識が高まり、言語や記憶に関わる脳のシステムが非活性化され、その反面、感覚情報を処理する領域は活性化するようです。
簡単に言うと、五感がが冴え渡って感覚が外に向く事で頭の中でのおしゃべりは止まっていくということのようです。
近年はよく『マインドフルネス』という言葉を耳にする機会が増えました。マインドフルネスの練習では、自分の知覚認識(五感)を高まった状態に持っていく方法を学びます。
マインドフルネスの練習をした人の脳では安静状態でも反芻をやめて『今、この瞬間』に意識を切り替えられる事がわかってきています。
今、ここに意識が向く事でネガティブな思考から脱却できるようになる練習になります。
もし、頭の中で今までの失敗や悪いことばかりが浮かぶという人は、頭の中がデフォルト状態のまま切り替えられていない状態かもしれません。そんな時は自然を感じられる場所(公園や川沿いなど)で少し散歩をするだけでも気分が変わるかもしれません。
なんか頭がモヤモヤしたり、悪いことばかり考えてしまうという事があれば、この方法をぜひ試してみてください(^^)
メンタルヘルスへの影響
近年では、身体の健康と同じくらいに心の健康(メンタルヘルス)にも注目が集まっていると感じます。
現代では、心をすり減らしてまで頑張っている人も多く、それがきっかけで心の病を抱える人も多くなってきています。
厚生労働省が3年ごとに10月に全国の医療施設に対して行われている「患者調査」の結果から「気分障害」(うつ病、躁うつ病、気分変調症等)の総患者数の推移を参考にすると、1996年では気分障害の患者数は43.3万人です。その後はどんどん患者数が増えていく傾向となり、2020年から流行が始まったコロナの影響で、外出を避ける行動パターンが広がり、医療機関の受診控えが問題になりました。
そうした状況の中で、うつ病・躁うつ病の総患者数は172.1万人と激増し、24年前の1996年と比べておよそ4倍近く増えています。このように、現代では心の病が増えている事が問題となっています。
このメンタルヘルスの問題に対しても、運動は非常に効果的である事がわかっています。
2015年にベルリンの宇宙極限環境センターの科学者が、カナダで開催されるユーコーンアークティック・ウルトラという過酷なレースに出場したアスリートの血中ホルモンを調べたところ、『イリシン』というホルモン数値が極めて高いことがわかりました。
イリシンはタンパク質の一種で、体脂肪を燃焼させる事で知られているのですが、実は脳にも強力な効果をもたらす事がわかっています。
イリシンには脳の報酬系を活性化させることや、天然の抗うつ剤としての効果もあるようです。
このイリシンの血中濃度が低いとうつ病になるリスクが上がり、逆に血中濃度が高くなるとモチベーションの向上や学習能力の向上します。
また、マウスの実験では認知機能の向上とも関わりがあり、アルツハイマー病などの神経変性病の予防にもつながるのではないかと言われています。
そんなすごいと評判の『イリシン』は運動ホルモンとも呼ばれており、新規のマイオカインとして知られています。
マイオカインってなに?
- 骨格筋から分泌されている筋ホルモンで、生理活性物質です。
- 「マイオカイン(myokine)」は、ギリシャ語のmyo(筋)とkine(作動物質)を組み合わせて名付けられている。
マイオカインは筋肉中で作られて、体を動かすことで血液中に分泌されていきます。トレッドミルを1回走るだけでも、イリシンの血中濃度が35%も上がるようです。また、運動中に分泌されるマイオカインはイリシンだけではありません。
2018年のある科学論文では、1時間のサイクリング中に大腿四頭筋から分泌されるタンパク質は、なんと35種類もある事が確認されています。効果も実に様々で、筋肉増強や血糖値調整、炎症の緩和、がん細胞の破壊などの効果があるものも確認されています。
このマイオカインですが、実はメンタルヘルスに関しても強力な効果があります。
少し難しい話になりますが、マイオカインの一種であるグリア細胞株由来神経栄養因子は中脳のドーパミン神経細胞を守る働きがあります。
この中脳のドーパミンの働きが阻害されることで、パーキンソン病やうつ病などの病気に影響してきます。
また、その他のマイオカインでは脳の炎症を抑えてくれる効果があり、神経疾患の予防としてうつ病や不安症の障害の緩和につながる事があります。
神経に毒となりうる物質の代謝を促して、神経に毒となる物質が脳に到着する前に血の中で無害な物質に変えたりもします。
以上を簡単にまとめると、『運動をして筋肉を動かすことで血中にマイオカインがたくさんの種類分泌されます。するとこのマイオカインが脳や体に行き渡り、いい感じに調整してくれる』ということです。
難しく言葉が多いので、イリシンがどうとか、マイオカインがなんたらという小難しい事は興味があれば覚えたらいいと思います。
大切なのは、運動したら筋肉から出るたくさんのタンパク質のホルモンで、体がいい感じになる!体を動かすと脳にも体にも良い事がたくさんあるんだ!
これだけ知っているだけでも十分だと思います。そして、これを知ったら体を動かしてみたくなりませんか?
運動するだけで体と心が軽くなるなら、メリットしかないかなと思います。副作用もありません。自分の体力と相談してメニューを組んでみて、少しからでもいいから運動を始めてみませんか?知っているだけではもったいないです。
まとめ
今回はケリー・マクゴニガルさんが書かれた『スタンフォード式 人生を変える運動の科学』を紹介してきましたがいかがだったでしょうか?
ここに紹介した内容は本書の一部分ですので、そのほかにも運動に関する多くの知見が書かれており、とても面白い内容ばかりでした。
運動と集団的な喜びに関する事や、運動と音楽に関することなど、いろんな角度から運動をするメリットを体験談と実験結果などを踏まえて解説されています。
今回の記事で運動に興味を持たれた方は、ぜひ本書を手に取って勉強していただきたいと思います。
それでは最後に今回の記事のまとめを書いて終わりにします。
- 運動で内因性カンナビノイドがでる。
- 内因性カンナビノイドを出すには、ややキツイ運動を20分以上する必要がある。
- 運動が楽しくなるのは、ややキツイ20分以上の運動を週4回で6週間は続ける必要がある。
- 脳のデフォルト状態を変えるには、瞑想か自然の中で運動する必要がある。
- 運動する事で、内因性カンナビノイドや筋肉から出るイリシンが心と体に良い影響を与えてくれる。
長文となりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。