皆さんこんにちは(^^)
今日も良い読書ライフを満喫されていますか?本日は、田内学さんが書かれた『君のお金は誰のため ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会の謎」』を紹介します。
私たちの世界は『お金』を使って生活に必要な物を買ったり、建物を借りたり、学校で勉強するのにもお金が必要になります。
経済格差などの話もあり、お金が無くて生活が苦しくなったりお金がたくさんあるとたくさんのものを買ったり派手な暮らしができるなど、生活の質も左右されます。
なのでお金を持っていた方が良いという価値観は誰にでもあるかと思いますが、本書ではそんな『お金』の本質や経済や社会との関連などを普段の価値観とは別の視点から考えさせてくれる大変勉強になる1冊です。
今回は本書の中からお金について抜粋して、内容を紹介してみたいと思います。
目次
- 著者紹介
- 登場人物
- みんなでお金を貯めても意味がない⁉︎
- お金で解決できる問題はない⁉︎
- みんなでお金を貯めても意味がない⁉︎
- まとめ
著者紹介
著者→田内学(たうちまなぶ)
- 1978年生まれ。
- 東京大学工学部卒業。同大学大学院情報処理工学研究科修士課程修了。
- 2003年にゴールドマン・サックス証券株式会社に入社。
- 以降16年間、日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。日本銀行による金利指標改革にも携わる。
- 2019年に退職後は佐渡島傭平氏のもとで修行し、執筆活動を始める。
- 著書に『お金の向こうに人がいる』、高校の社会科教科書『公共』、『10歳から知っておきたい、新しいお金のはなし』などがある。 また、監修作品には『ドラゴン桜2』、『インベスターZ 番外編「人生を変える!令和の投資教育」』などがある。
- 本書でも登場するお金の向こう研究所代表。社会的金融教育者として、学生や社会人向けにお金についての講演なども行う。
登場人物
佐久間優斗(主人公)
進路に悩むトンカツ屋の息子。中学2年生で進路相談の後の帰り道にモヤモヤしてる。ひょんなことから七海と一緒にボスのお金の話を聞くことになり、お金について理解を深めていく。
久能七海
アメリカの投資銀行員。東京支所で勤務している。為替や日本国債の取引で大量のお金を扱う。ボスからお金の勉強を受けてくるようにと上司に言われてお金の向こう研究所に来る。
ボス
初老の男性。『お金の向こう研究所』の所長をしてるからボスと呼ばれている。投資や経済についての研究をしていてお金への理解が深い。関西弁で陽気な性格。優斗と七海にお金の正体について話をしてくれる。
お金自体には価値がない⁉︎
本書ではボスがお金について主人公と七海に話をしながら、お金の正体について話をしていきます。
その中で勉強になった内容について話をかいつまんで説明していきます。
燃やされるお金
古い紙幣は5年もするとボロボロになると言われています。なので古い紙幣は燃やされて新しい紙幣が刷られます。
これには出回るお金の量を調整してインフレ対策の意味もあると言われてます。
しかし、日本人は昔から貯金大好き国民と言われています。その背景には、昔銀行の金利が高くて、預けているだけでもお金が増えていたという歴史がある事が一因と言われています。。
でも、将来に向けてみんながみんなお金を貯めていくと、社会全体のお金の量は増えてインフレになるのでは?個人では増えて嬉しいが、社会全体で見るとお金の量が増えるので、円の価値が減ってしまう事が考えられます。
お金の量を調整するのは大事なんですね。ちなみに、毎年焼却される古い紙幣は30兆円ほどある様です。
お金の歴史
どうしてお金に価値があるとみんなが感じているのでしょうか?
それは、昔は兌換紙幣だったから。そして、みんながお金は価値があると信じたことで兌換紙幣が不換紙幣になりました。
兌換紙幣
昔銀行では決まった量の金と交換してもらえた紙幣のこと。金の価値とお金の価値を交換するので、お金の価値をみんな信じた。
不換紙幣
お金の価値を国が保障してくれるので、金の保有量に縛られずに自由にお金を発行できる様になった。
江戸時代には銅銭や小判などが使われていましたが、1873年、明治になって1円札や5円札が流通する様になりました。
1873年には地租改正もあり、税金を米ではなくて紙幣で収める様になりました。
今まではお金が無くても米さえ渡せば納税という事になってましたが、納めるものが米からお金に変わります。その事で日本中の全員がお金を必要性が高くなり紙幣が一気に普及することになりました。
お金で解決できる問題はない⁉︎
現代ではサービスや商品にお金を支払うという構図が成立しています。なので、お金を払うことで自分の欲しいものややりたいことが出来ています。
しかし、ボスはお金で解決できる問題は無いと断言。優斗と七海は頭を捻ります。私も読んでいて頭を捻りましたが、ボスが言っている意味が読んでいるうちに納得できた気がするので紹介します。
お金自体には何の力も無い⁉︎
例えば、無人島に1つだけ物を持っていくなら何を持って行きますか?という質問を良く聞きますが、この場合なら皆さんは何を持っていくでしょうか?
サバイバルナイフ?ライター?濾過装置?思いつくものはたくさんあるかと思います。しかし、ここで『お金』と答える人は多分ほとんどいないかと思います。
今の環境で暮らす上では欲しい物といえばお金になりそうですが、無人島には持って行きたいという人はいないかと思われます。その違いは何でしょうか?
お金という物は、交換する人がいることが大前提としてあります。
じゃあ無人島に2人でいたとしたらどうでしょうか?多分これでもお金が欲しいという人はいないと思います。それは交換する物の価値が釣り合わないからです。
魚を獲るのが得意な人と、木の実などの採集が得意な人が、それぞれ食べ物を交換するなら成立するかもしれませんが、仮に無人島で魚とお金を交換したとして、お金にはナイフの様に道具を作ったり料理の道具として使えたりは出来ませんし、お腹を満たしてくれることもありません。
お金自体には持っていたとしても、何の力も無いというのはこういうことです。
しかし、物々交換だけでは効率が悪いし、物の価値も人それぞれで物々交換は成立しないことも多いです。
なので、ある程度共通認識で決まった価値のある物で交換できた方が便利でいいなぁ、と昔の人は考えました。
そこで貝殻や布、家畜(牛など)、石なんかも交換できる物の対象として使われる様になりました。これがお金ができる前の『物品貨幣』という形です。ある程度価値がある物が共通認識として定着したら、いろいろな物と交換出来ます。
これが後に軽くてある程度の量を持ち歩けるなど利便性を追求された『紙幣』や『硬貨』として変化して行きます。
交換に使う物は姿形を変えて使うのに便利になりました。今では形のないデジタル貨幣などの電子マネーやビットコインも存在しております。時代の流れはすごいですね。
しかし、使われ方自体は昔と大きな違いはありません。それは『自分ではできないけど、欲しい物やサービスと自分の物を交換する』という使い方です。
この時に使われるのがお金というだけで、自分が欲しい物やサービスの後ろには、目に見えないたくさんの人がいて、その人たちに自分の要求に応えてもらったり問題解決をしてもらう代わりにお金を対価として交換してるだけなのです。
例えば、お肉を買ったとします。では、そのお肉の後ろにはどんな人たちがいるでしょうか?まず直接的にはお肉を売っているお店の人がいます。
お店の人はお肉を売るために、そのお肉を商品の形に解体してくれる業者がいます。
では解体する業者はお肉となる家畜を仕入れる必要があります。そこで家畜を育てている畜産業の人達がいます。
では牛を育てるための飼料が必要なので、飼料を作ってくれる業者にお願いします・・・とちょっと考えただけでもお肉1つの後ろ側にはたくさんの人が関わっているのです。
自分では牛を育てることも、解体してお肉にすることも出来ません。その自分が出来ない作業をお願いして自分の手元に届けてもらえるために、お金という交換券を使って物を交換しているだけという事です。
なので、本書を読んで私はお金とは『自分が出来ないことを他の人にやってもらう為の交換券』なんだなと感じました。
しかし、たまにお金を払ってるから偉いんだからという様なお客様は神様主義の人がいます。
しかしこれもおかしな話で、交換するという立場上、上下関係などはなく対等であるはずです。
しかし、同じ様なサービスを提供してくれる店も多いため、そのお金をどこで使うかの選択権は客側にあります。
本書でも言われていましたが、お金を持っている人は何にお金を使うのかを『選択する自由』は持っています。
お金に力があるとすれば、それは何にお金を使うのかという『選ぶ力』だけです。
限りのあるお金をどんな物やサービスに使うのかを自分の意思で決めれる『選択の自由』です。例えば先ほど例に出したお肉にしても、牛や豚、鶏などで値段が違うし、牛でも国産や海外の肉でも値段が違います。
1000円持ってたとしたら、その予算内のお肉しか買えませんが、2000円持っていたら選べる肉の種類も増えて、選択できる幅が増えますね。お金とはまさに、持っていたら選択肢を増やしてくれる『道具』なのです。
みんなでお金を貯めても意味がない⁉︎
今は聞くことが少なくなりましたが、少し前に老後2000万円問題という事でニュースなどで騒がれていました。
年金支給額の低下や人口減少によるGDPの低下など色々と暗いニュースが多いです。不安を感じて自分年金などを始めた方もいるのではないでしょうか?
国からはiDeCoや新NISAなど自分で将来に蓄えを作る制度も導入されていますね。
私も煽られて新NISAとiDeCoを始めました。
しかし、本書で語られていたのは『お金自体の総量は増えないから、貯めようと思ったら奪い合いになる』という事でした。平和な話じゃないですよね?そう言われましても、いまいちピンとこないなという感じです。
日本の貨幣の流通量は日本銀行によってコントロールされています。ちなみに2023年12月末時点では約124.6兆円ものお金が流通しているらしいです。
では、この流通してるお金を国民が貯金に回してしまうとどうなるでしょうか?
お金があるのにお金の流動性が低い状態になります。そして、お金はいくらあっても不安になるという問題もあります。経済を活発にするためにはお金をみんなが使う事も大切です。
そして、先ほど人口減少の話も少ししましたが、老後2000万円問題も年金問題も、お金が足りなくなるというのは結果の話であって、根本の問題は別にあります。
それが本書では『少子化によって生産力が足りなくなる事』だと話しています。
例えば、パン1つを若者と老人が奪い合うという構図が本書で例えられています。
若者から老人への仕送りが増えれば、老人はパンを買えるけど、若者は買えなくなり、仕送りが減れば今度は老人がパンを買えなくなります。
ここで多くの人は老人がお金を貯めておくべきだと考えます。それなら若者も老人もパンを十分買えそうだからです。
しかし、これは根本的な解決にはなりません。この問題の本質は、パンを1個しか作れない『生産力の低下』が原因だからです。
なのでパンを食べたいという需要と、パンが1つしかないという供給の問題で、パンの価格が高騰する事が容易に想像がつくかと思います。
そしたら、結局は値段がすごく上がったパンを若者と老人のどちらが買うか?または半分ずつ分け合うか?という構図が出来上がります。
個人の視点ではパンを食べるという目的でお金を貯める事自体には意味がありますが、日本という社会全体で考えた場合、みんなでお金を貯めてもお金の総量は増えていないから、何の解決にもなっていません。
お金は確かに選択の自由が増えますが、逆に言えばお金が無ければ何も選べなくなります。
自分のお金が増えるということは、誰かのお金が減って選択できる自由も少なくなっているということになります。
なので、お金を増やそうとする事よりも大切なのは、少子化を食い止めて労働人口を増やしたり、1人当たりの生産量を増やす事がこれらかの先は大切になります。
パンを買うためのお金を増やすより、パンを作る為の生産力が増えた方がみんなハッピーになれるのではないでしょうか?
そして、話は少し逸れますが、本書ではもう1つ寄付するだけでは問題解決にはならないという事を言っています。
本書ではアフリカへの支援者が出てきます。皆さんはアフリカの人たちへの支援と言ったら何を想像しますか?
多分大多数の人は服や食べ物やお金などの寄付する事を想像するかと思います。しかし、寄付をするだけではアフリカの問題解決にはなりません。
服を例に挙げると、先進国の人達から服が寄付されたとします。するとアフリカの人たちはタダでたくさんの服を手に入れる事が出来ます。
確かに着る物に困ることは少なくなるかも知れません。しかし、それだとアフリカでは高いお金を払って服を買う人がいなくなってしまいます。
すると服を作るという繊維産業が発展しないままになります。これは他の産業でも同じ構図が成り立ちます。
食料品の支援も、支給品があるうちは空腹には困りませんが、無くなったらまた貰えるまで待たないと行けませんし、食べ物を作るという産業が発達するものでもありません。
もちろんお腹を満たすという事に意味がないとは言いませんが、根本的な解決にはなっていないのです。
ここで大切なのは、魚を与えるのではなく『魚の釣り方を教える』ことです。
どうしたら自分達で問題を解決できるかのノウハウを教える事が長期的に見て大切になります。
その問題を解決できるようになるまでは、先ほどの現物支給は必要なものだと思います。なので、本書ではその問題解決として、物を送るのではなくてアフリカの物(本書では服でした)を買い取って日本で売るという支援を行なっていました。これは互いに対等な立場で物を売り買いして産業を促進させるという狙いで行っています。
ただの寄付になると現在の状況しか変えられませんが、産業を促進させ発達させる事で、現地での技術力や生産能力が向上して自分達で物を作って販売して豊かになっていけるのです。本書ではこの事を『未来に蓄えるもの』と表現しています。
そして、これは商品とかだけではなくて、目には見えない物も同じだと言います。
それが教育制度や医療制度、また他にもインフラと言われる社会基盤も必要です。
喉が渇いたなら、水を与えるのではなくて水脈の探し方や掘り方をおしえてあげたほうが、全体で見た時に豊かになります。
それを仕事に出来ればその産業が発達する。
お金を増やすのは個人の視点では選択の自由が増えていいかと思いますが、みんながそれをやるとお金が個人から動かないので社会が回らなくなります。
お金を使うにしても、浪費にばかり使えば未来への投資にはなり得ません。大切なのはお金を使う事で未来にどんな価値が出るのか?という視点が大切になるかという話です。
この話でお金を何に使うのか?という事を今一度考えさせられるなと感じました。
まとめ
今回は田内学さんが書かれた『君のお金は誰のため』を紹介させて頂きました。
この本ではお金を増やす事も使う事も、どんな目的で行うかが大切だという事を学べました。
特に、お金は誰もが欲しいと考えますが、マクロの視点からしたらお金の総量は増えていないという事や、お金を使う事の本質は物々交換で、人の悩みや問題を解決するためにもらう物であるとか、本来は当たり前の事だとわかることも、言われないと忘れているなと感じました。
自分のお金を何に使うのか?支払ったお金は誰の所に行くのか?そのお金がどんな風に活用されていくのか?を考えるきっかけになる本だと思います。
金融教育がほとんどない日本人にとって、お金の本質やお金を使うことを学べる1冊だと感じ、子供が大きくなったら勧めたいなと思える本でした。
また、今回は紹介しきれなかったですが、本書の着地点として『世界は贈与で出来ている』という事と『人を心から愛する』という事に繋がっていきます。
お金の話なのに愛⁉︎と思うかも知れませんが、実は大切な話となっています。
内容が気になる方はぜひ本書を手に取ってみてください。
それでは今回はこの辺で終わります。読んで頂き有難うございました。