教養の本

Books#4 『地球に住めなくなる日』

今回紹介する本は、著者:デイビッド・ウォレス・ウェルズさんの『地球に住めなくなる日~「気候崩壊」の避けられない真実』という本です。

この本は一言でいうと『地球温暖化の影響で地球がヤバい』という事を教えてくれる本です。本書のタイトルを見ると怖い感じを受けたり、そんなことないでしょと思う方もいるかもしれないですが、本書の内容をみていくと将来に不安を覚え気候変動の事について真剣に取り組まないといけないと思わされる内容です。

特にここ数年の気候変動は昔と違い”〇〇年に一度の…”という台風や豪雨が増えたこと、夏日になると過去最高気温が…などを毎年見る様になっています。

かくいう私も過去に1度、集中豪雨により河川の氾濫が自宅近くで発生し、床上浸水までいき救助隊にお世話になった経験もあります。その時は生きた心地がしなかったですね。

そういう事も全て地球温暖化が原因で起きていたものだと考えると、他人事ではないなと感じました。

本書の内容では、過去の事例を基に自然界で起きている変化や災害の内容、将来どうなっていくかなどを解説してくれています。読んでいる中で聞いたことはあるけどどんな内容かあいまいな言葉が多くあったので、解説を入れながら本書の内容をかいつまんで紹介していけたらと良いなと思います。最後までお付き合いいただけますと嬉しいです。

目次

  1. 過去に起きた大量絶滅
  2. 世界での取り決め
  3. 今世界で起きている温暖化の影響
  4. これからの地球を変えるために
  5. まとめ

過去に起きた大量絶滅

最初の章で既に物騒な言葉が出来てましたね。大量絶滅と聞くと、私は恐竜が隕石の落下が原因で絶滅したという印象がありましたが、その恐竜が住んでいた時代よりもさらに前に、地球の生物が大量絶滅に陥ったことがあると本書では書かれていました。

  • オルドビス紀末(4億5000万年前)すべての種の86%が絶滅
  • デボン紀(3億8000万年前)すべての種の75%が死滅
  • ペルム紀(2億5100万年前)すべての種の96%が死滅
  • 三畳紀(2億100万年前)すべての種の80%が死滅
  • 白亜紀末(6600万年前)すべての種の75%が死滅

白亜紀が恐竜が生きていた時代です。年数の桁が大きすぎて、これだけ見ると意外と白亜紀が最近に感じるのは私だけでしょうか?白亜紀には隕石(直径10~15㎞)が地球に落ちた衝撃で、巻き上がった土砂が太陽の光を遮り植物や植物プランクトンの光合成が出来なくなります。すると草食の恐竜は食べる物が無く絶滅し、草食恐竜を捕食していた肉食恐竜も食料が無くなって絶滅してしまったという経緯があります。これは有名な話ですが、白亜紀以前にも4回絶滅の危機が訪れています。白亜紀に関してはイレギュラーな絶滅の原因ですが、他の4回はすべて同じ事が原因です。それが今回紹介する地球温暖化が原因と言われているのです。

そもそも、白亜紀以前に4回も地球が絶滅の危機に陥ったことがあるなんて知らなかったですし、地球が温暖化する事が直接的に我々生物にこんなにも大きな影響があるなんて考えていなかったので、非常に衝撃的な内容でした。これは本書の冒頭に書かれており、ぐっと関心を引き寄せられました。

温暖化による絶滅は温室効果ガスの二酸化炭素(以下CO2)やメタンなどの影響で地球の温度が5℃上昇したために起きたと言われています。

そして、現在私たちは大量絶滅時の少なくとも10倍の勢いでCO2を出しているみたいです。産業革命以前と比べると100倍…、そして、過去1500万年で最も高いレベルになっているのそうだ。

産業革命が始まってからのツケを、現在生きている自分たちが払わされているという感覚があり、多くの人もそう思っているかもしれません。しかし、化石燃料を燃やして大気中に放出されたCO2の半分以上は直近30年に発生したものだそうです。つまり、昔の人たちはきっかけに過ぎず、一番地球の生物たちを脅かしている存在は、現在地球に存在する私たち人間に他ならないという事実です。

これを読んだときは非常にショックが大きかったです。特に意識して悪意を持って地球をどうにかしてやろうなんて考えたこともありません。しかし、私たちが享受している便利な生活・便利な物・現在の生活はほぼすべてにおいて地球温暖化の原因となる物を無意識に使っていると感じました。私たちは、温暖化に対して強い危機感を持ってCO2削減に取り組まないといけない事を改めて感じました。

では次の章で、世界での温暖化に対する取り組みと、最近聞くけどよくわからない言葉ついてみていきましょう。

世界での取り決め

地球の温暖化問題が地球上の生物を絶滅させるほど危険な事だという事は前の章で紹介しましたが、この問題に対しては世界の国々がCO2削減に動いており色々と話し合いCO2排出量を減らすことなど協議しているようです。

これは『気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)』として1992年5月に国連総会で採択されています。温室効果ガスの排出・吸収の目録や温暖化対策の国別計画の策定などを締約国の義務としています。

UNFCCCの目的は温室効果ガス(CO2・メタン・一酸化窒素・HFCs・PFCs・SF6)の増加が地球を温暖化させることがわかっているので、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させ将来の気候を保護する事を目的としているようです。

1995年から毎年開催されており、皆さんが聞いたことがあるものでは、1997年12月に開催された第3回締約国会議の京都会議による『京都議定書』や、2015年にフランスのパリで開催された第21回締約国会議で採択した『パリ協定』などがあるかと思います。

私は言葉だけは聞いたことがあるけど、なんだっけ?環境に関しての事だったと思うけど内容は全然わからない!…という状態だったので、ここで簡単に解説しておきますね。

  • 京都議定書→1997年12月に約160か国が参加して用途で開催された『地球温暖化防止京都会議』で取り決めを行った約束事のようなもの。温室効果ガス削減に対して努力目標を定めて、各国取り組んでいきましょう!という解釈で良いかと思います。具体的には1990年の温室効果ガスを基準に、2008年~2012年の約束期間に達成する事を目標にする。先進国全体で5.2%削減目標、そのうち日本は6%減らすことが目標とされていました。この会議では、すべての国が対象ではなく、主に先進国(ヨーロッパ・アメリカ・日本など)で大量の温室効果ガスを出している国が対象となっており、あまり温室効果ガスを出していない国は、国の発展の為に増やしても良いという事になっていた様です。しかし、アメリカは8%減らす目標であったが条件が不平等な事や経済発達が他国よりも遅れる等の懸念などを理由に不参加を表明しています。
  • パリ協定→2015年にフランスのパリで開かれたパリ会議で合意された協定の事です。これは『世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする』という目的で全世界共通の国際的な取り組みの事を言います。京都議定書と違う所は、先進国・発展途上国関係なく、すべての国に共通する目標の温暖化対策における基本の方針を決めた事です。これは温暖化の研究が進む中で、世界的に温室効果ガスの排出を削減するべきと考えられるようになった事や、21世紀末には平均気温が4℃上昇し水不足・農作物削減・干ばつ・森林火災・海面上昇など世界的に深刻な影響が出る事が予測されている為です。このパリ協定の目的は『出来る限り早く温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と吸収量のバランスを取る事』を目標にしています。各国ごとに目標値がバラバラなのでここでの紹介は避けますが、興味があれば調べていてくださいね。

このパリ協定では、温室効果ガスを減らす事と同時に吸収して、総合的に実質の温室効果ガスの排出量が0になるようにという事を言っています。これは最近耳にするカーボンニュートラルという考え方だと思います。ニュースなどで聞くことが多くなりましたが、実際の所どんな意味なのか分かっていませんでした。また、その他にも再生可能エネルギーSDGs(持続可能な開発目標)などの言葉が広がりつつあります。皆さんこの言葉を説明してと言われたときに、ちゃんと説明できるでしょうか?子供に聞かれて『これわね…』と説明出来ればかっこいいですよね。私は本書を読んでそれらの言葉にも興味を持ち調べてみたので、紹介していきます(^_^)

  • カーボンニュートラル→温室効果ガスの排出と吸収又は除去を合計で0にする。差し引きゼロという意味です。
  • 再生可能エネルギー→太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどの地球資源の一部など自然界に常に存在するエネルギーの事を指します。その特徴は『枯渇しない』、『どこにでも存在する』、『CO2を排出しない』の3点となります。また、石油・石炭・天然ガスなどは化石エネルギーと言われ有限な物で、使用するとCO2を排出します。
  • SDGs→Sustainable Development Goalsの略で2016~2030までの国際目標。持続可能な世界を実現するために17のゴール・169のターゲットから構成されています。世界の国々では色々な事象や立場から対立する事もありますが、同じ地球に住む以上はこれだけは一緒に取り組んでいきましょう!と決めごとを作った物です。17項目の中には気候変動に対する項目もしっかり明記されており、その他にも自然環境を大切にする項目もいくつか存在しています。

また、2010年の国土交通省気象庁サイトから一部抜粋しますが、温室効果ガスの種類は、CO2(約76%)、メタン(15.8%)、一酸化窒素(6.2%)、フロン類など(2.0%)の割合となっています。

ちなみに、2019年の国別CO2排出量で、世界全体で約335億トンです。途方もない数字で想像もできない量ですね。その内1位は中国で29.5%、2位アメリカは14.1%、3位はインドは6.9%、4位ロシアは4.9%、そして5位は日本の3.2%、日本の総排出量が12億1200万トン、次いでドイツ1.9%、韓国1.7%…etcとなっています。5位までの国だけで世界の約6割のCO2を排出しているという事になります。

毎年、CO2だけでも相当な量が排出されているので、それが大気中に積み重なっていると考えると温暖化していくことも納得だなと感じました。

では次の章からは、世界で起きている温暖化の影響や災害に関してみていこうと思います。

今世界で起きている温暖化の影響

最近は各国で様々な気候変動による弊害が頻発しており、ニュースなどでもその一端を報道されていて、目にすることも多くなったと感じます。ここでは温暖化の影響による気候への影響を紹介していこうと思います。

  1. 熱波
  2. 飢餓
  3. 山火事
  4. 水不足
  5. 死にゆく海
  6. 感染症
  7. 経済崩壊
  8. 気候戦争
  9. 気候難民

簡単に記載しましたが、気候変動による影響だけでもこれほどの数になります。すべて紹介すると内容が膨大になるので、ここではいくつかに絞って解説していこうと思います。もしほかの内容も気になる方は、本書を読んで頂いて更なる知識を追求して頂ければと思います。

熱波

熱波というのは、何日もの間ある値以上の高温が続く現象の事を言い、世界気象機関の定義では、”日中の最高気温が平均最高気温を5℃以上上回る日が5日以上連続した場合”の事を熱波と呼ぶそうです。

この熱波による影響はすでに見られており、1998年インドでは2500人、2010年にロシアのモスクワで5万5000人の死者が出ており、中東では数か月も熱波が続いた事もあったようです。

そして、気温上昇に拍車をかけるのが都市の存在です。アスファルトとコンクリートは熱を吸収してため込む性質があり、これが問題となっています。

夜に気温が下がる事で人の体は回復しますが、気温が下がらなかったり下がる温度が短かったりすると、体は加熱される状態がずっと続いてしまします。アスファルトとコンクリートは昼に大量の熱をため込んで夜に熱を放出するので気温が下がりづらい状態になってしまいます。昼は太陽からの熱・夜はコンクリートからの熱で温められてしまいます。これは”ヒートアイランド現象”と言われています。

世界は都市化が急速に進んでおり、2050年までに人口の2/3が都市に居住すると国連は予測しています。夏に35℃以上に達する都市は世界に354か所ありますが、2050年には970か所以上に増えて、命に係わる暑さの危険にさらされる人は16億人になると予測されています。

35℃以上が続くと、人は熱死する可能性があります。そんな日が日常的に起きる様になるという事です。都市に住むだけでも命を失うリスクが高くなる日がそう遠くない未来には確実に待っているという事です。

飢餓

人の食べ物の約40%を穀物が占めています。その穀物は気温が1℃上昇すると収穫量が10%低下すると言われています。今世紀末には世界の人口は現在の人口の1.5倍になると予測されているので、このまま温暖化が進めば食料が足りなくなることが予想されます。

そしてタンパク質も厳しくなると書かれています。穀物は家畜の牛などにも多く必要とされていますから、人口が増えれば家畜数も増えます。そして餌として必要な穀物の量も増えていきます。更に牛の話で、中国では牛乳の消費量が増えており、2050年までに現在の3倍に増えると予測されています。しかも牛のげっぷはメタンガスを含んでおり、温暖化の後押しにもなってしまいます。酪農による温暖化ガスの排出量は35%増加すると考えられています。

また、作物にもよりますが暖かくなると害虫も活発になり虫食い被害も増えるしカビや病気のリスクも上がります。すると更に作物が育ちづらい環境となっていき食べられる作物は限られていくのが想像できます。

CO2が増える事で植物の栄養素が低下するという話もあります。これは『CO2が増える事で草や木の葉は糖分を生成。炭水化物(糖質+食物繊維)量が増える事でその他の栄養素が乏しくなる』という事です。これは2018年に行われた研究で、18種類の米の栄養素を分析したものですが、結果はCO2増加による栄養劣化がすべての品種で確認されたという事です。タンパク質をはじめ、鉄・亜鉛・ビタミンB1,B2,B5,B9など、ビタミンE以外の栄養素がすべて減っていたことが確認されました。

これだと、お腹いっぱい食べれたとしても体に必要な栄養素は足りていない状態になってしますね。そんな状況も気候変動によって将来起こってくることが考えられます。

このような食糧危機に対して各国では画期的な技術開発が進んでいます。中国では農業戦略のカスタマイズで生産性を引き上げて温室効果ガスを出す肥料を減らそうとしていたり、イギリスでは土を使わない農業を目指す企業が2018年に初の『収穫』を報告したり、アメリカでは土地を使わず屋内で育てる垂直農法や、新たなタンパク源としての『培養肉』に期待が高まっていたりします。

これらの技術対策が温暖化のスピードよりも速く実現できることに期待しつつ、日々のニュースを見ていきたいですね。

水没する世界

このままCO2排出量が増えていくと、今世紀末には海面が1.2m~2.4m上昇するかもしれません。これはパリ協定で決めた気温上昇2℃未満が達成できたとしても起こる事のようです。

このままだと、インドネシアの首都ジャカルタでは洪水と地盤沈下による影響で2050年までに水没するのではないかと予測されています。また、ヨーロッパの北部広範囲やアメリカの東半分はこのままでは洪水の発生が10倍になるようです。

2018年の研究で、南極氷床が融ける速さがこの10年で3倍になっている事がわかっています。1992~1997年に消失した氷は平均490億トンでしたが、2012~2017年には年間2190億トンになっていました。気候科学者の方が、氷の融解が10年ごとに2倍になるようなら、海面上昇は50年で数メートルになると指摘しています。

平均的なアメリカ人1人が1年間に排出するCO2が南極の氷床20万トンを融かし、海水を1万立方メートル増やしている1分当たり20ℓとなる計算です。

また、西南極氷床とグリーンランド氷床が予想以上に溶けやすくなっている事がわかってきており、グリーンランドでは1日に10億トンもの氷床が消えています。どちらかでも氷が解けてしまうと、地球の海面は3.3m~6m上昇するだろうと予測されています。

それとは別に、北極圏の氷が融けていくと、問題になるのがメタンという温室効果ガスが増える事です。北極圏の永久凍土には大気中に存在する量よりも多い1兆8000億トンの温室効果ガスが閉じ込められており、CO2よりも数十倍温暖化の効果がメタンが放出されると言われています。永久凍土はすでに融け始めており、カナダの永久凍土では境界線が130㎞程後退している様です。

また、雪や氷は白いので太陽光を反射しますが、それが少なくなると太陽光を吸収し地球温暖化が進行していくことも懸念されています。これを『アルベド効果』と呼ぶみたいです。

このような状態が続くと、ある研究者の人は海面が50m上昇すると言ったり、アメリカの地質調査所では80mとの予測も出ています。

2100年までに2mと言ったり、80mまで海面上昇がおきると言ったり、範囲にばらつきがありすぎますが、逆に言えば予測する事が難しい事だといえます。一つの原因で温暖化が進んでいるわけではなく、色々な要因で気温の上昇が進んでいるので、未知数なのかもしれません。ですが、2100年までには2mかもしれませんし、80mも上昇するかもしれない、そんな可能性が決してないとは言い切れないところが怖い所です。

80mにもなると、世界の大半の海岸線が消えて、人が住めないところが増えますね。人口増加が進む世界で、住める土地が減ってしまうとどのような世界になるのでしょうか?予想はできないですが、今よりも住み良くなっている可能性がどれほどあるのでしょうか?

山火事

山火事のニュースはアメリカで発生しているというイメージが私にはあります。何日も続く火事がニュースになり『〇〇㌶の面積の大規模な火事が…』のような物をテレビで見る事があるイメージです。

アメリカでは山火事の面積が1970年代に比べて現在は2倍に増えているとの事です。2050年にはこれのさらに倍になり、場所によっては5倍になるという予想もされています。平均気温が1℃上昇するごとに4倍となると言われています。

また、山火事はアメリカだけの問題ではなく世界中で問題となっています。グリーンランドやスウェーデン、ロシア、フィンランドなど比較的気温が低い地域でも大規模な山火事が多くなっています。

そもそも、山火事が起こる原因は人為的な要因と自然発火の2つがあります。人為的な物は野焼きやたばこの不始末などがイメージしやすいでしょう。自然発火とはどういう事?と思う方もいるかと思いますが、これは落雷や乾燥の進行で落ち葉や空気中の水分量が低くなり、枯葉がお互いにこすれあい摩擦が起きて発火するという現象で起こるようです。なので、乾燥地帯では寒い場所や雪がある場所でも自然発火により家事になりやすいという事です。

世界のCO2排出の原因の約12%は森林破壊となっており、山火事は25%を占めています。また最近は日本でも山火事が増えており、年間1000~2000件山火事が発生している様です。日本での山火事に関するニュースはあまり目にする機会がなくなじみがないですが、こんなに多く発生している事に驚きました。今後は日本でも山火事のニュースが増えていくかもしれません。

水不足の脅威

地球は70%程が水でおおわれていると聞いたことがある方は多いかと思います。ではその中で淡水(飲み水や生活用水として使用されている水)の割合はどの程度あるか知っているでしょうか?

答えは2%程度でその大半は氷河の形で存在し飲み水として使用できるのは0.007%程と言われています。淡水の約70~80%は農業や食糧生産に使用され、残り10~20%は工業用水として使用されています。0.007%の飲み水が、世界約70億人の生命を支えている事になります。パーセントで表すとものすごく少なく感じますが、70億人に必要な量は確保できる計算となります。

しかし、現在世界では21億人の人が安全な飲み水を確保できず、45億人が安全な水で清潔を保つことができなくなっています。

世界の人口の半分は雪が融けた水に頼っているとの事ですが、温暖化により雪が融けやすくなっており、ヒマラヤ山脈の氷河は2100年までに40%程は消失すると予測されています。

2050年にはアジアだけで10億人が水不足に陥り、世界の50億人は水資源を充分に活用できない状況になると予想されています。

インドでは2018年の政府報告書で6億人が『重度から極度の水ストレス』にさらされており、水不足や水汚染で毎年20万人が命を落としている様です。

世界中にある湖の多くはこの100年の間にどんどん干上がっているといいます。世界有数の巨大湖がどんどん干上がっていると言われており、また、気候変動によって湖の中に最近の異常繁殖や水質低下もあり、飲み水を地域へ提供する事が難しくなったとしもあるとの事。また、淡水湖はメタンの発生源で自然界から発生するメタン全体の内16%を占めると言われています。気候変動が進むと排出量は今後50年で2倍になると予想されています。

水不足で一番怖い所は、水資源を奪い合う戦争が起こる事です。水をめぐる争いは昔から発生していますが、一番古いもので紀元前3000年前からあった事もわかっています。1900年以降は500件程あり、その内の約半分は2010以降に起きていると専門家が言われています。戦争内容も国同士のものから、国内の内戦など様々あり、今後も増えていくのではと予想されます。

死にゆく海

海は人間が排出しているCO2の1/4以上を吸収してくれています。この50年では地球を暖める熱の90%を吸収してくれていました。しかし、海が抱え込む熱エネルギーは2000年に比べると15%程増えております。

その結果、『海洋酸性化』という現象が起きています。酸性化で植物プランクトンが減少し、大気への硫黄の放出が減って雲の生成も減る事で、海洋酸性化は0.25~0.5℃の温暖化を引き起こすと言われています。

また、海水温の上昇と酸性化によりサンゴの白化現象が進んでいます。これは温暖化のニュースの時にたまに一緒に報道される事があり知っている方もいると思いますが、2030年頃には世界の約90%のサンゴが脅威にさらされると言われています。では、サンゴが白化するとどんな影響が出るのでしょうか?サンゴ礁が生命を支える海洋生物は全体の1/4にもなり、さらに5億人の食糧減と収入源となっています。また、サンゴ礁は暴風雨による洪水を防ぐ役割も果たしており、フィリピンやマレーシア、メキシコ、キューバなどにそれぞれの国で年間4億ドルの価値をもたらしています。

過去50年で海が完全に無酸素化した『デッドゾーン』と呼ばれる海域が、世界では400か所以上に増えており、面積にするとヨーロッパ大陸にほぼ相当する数百万平方キロメートルになると言います。最大の要因は海水温の上昇で、暖かい水には酸素が溶け込みにくいようです。温暖化が進むと海水温が上昇していき、酸素が少なくなった海が増え、そこで生活する生物は死滅するか環境が良い海に逃げていくので、その周辺に住む人の海の資源が少なくなり生活が成り立たなくなるという事が起こっています。今までは世界の海には流れがあり、温度を調整するように海流が循環していましたが、温暖化の影響でその海流の流れが緩慢になっています。すると世界全体の海の温度が2極化しやすくなり、暖かい海はもっと温まる方向にいき、冷たい海はもっと冷たくなっていくことが予想されます。

感染症

氷河が融ける事で、中で氷漬けになった感染症の菌なども一緒に地球上に放出されるのではという懸念があります。これまでは環境が整った実験室での話で実際起こるかわからなかった物だったが、2016年にシベリアで少年が炭疽で死亡し、他の住民20人も炭疽が検出された事案があります。また、トナカイも同じ理由で2000頭以上が死んでいます。この原因が、永久凍土が融けて75年前に炭疽で死んだトナカイが露出し炭疽菌が空気中に放出された為と言われています。

昔の病原菌が新たに出現する事も怖いですが、現在は今ある病気が場所を変え変質したり進化する事による脅威が大きいと言われています。特に温暖な気候ではウイルスは活発になる事が言われている事や、細菌やウイルスを媒介する蚊も活動範囲が広がる事が懸念されています。ブラジルでは蚊が生息するのはアマゾン川流域だけでしたが、2017年にはサンパウロやリオデジャネイロなどの大都市に蚊が来ていることが判明しています。蚊が媒介する病気は黄熱やマラリア、ジカウイルスなどが有名ですね。これらの病気が多くの人に降りかかる危険が大きくなります。また、世界はグローバル化が進んでおり、旅行なども昔よりはるかに行きやすい時代となっています。もし感染した人が他の国に行きそこで別の人に移って発症するとなると…世界的な感染が起きやすい状況だという事がわかります。

また、病気を媒介する生物は蚊だけではありません。最近はマダニによる被害も増えていると書かれています。マダニはライム病という病気を媒介すると言われており、日本・トルコ・韓国では2010年にはライム病がほぼ皆無であったが、徐々に人数が増えている様です。蚊やマダニなどが媒介する感染症はここ13年間で約3倍に増えたと書かれています。そして感染症の影響は人間だけでなく動物にも顕著に表れると言います。ニューイングランドではムースという動物にマダニがびっしりとたかっているのが見つかったと言います。その数は約9万匹で死因はライム病ではありませんでした。マダニ1匹が数ml血液を吸ったことによる失血死だったとの事です。それほどマダニが多く存在し、かまれるだけでもライム病にかかる危険があり、動物ではたくさんのマダニが体についている事で失血死する危険もあるなど、こんな生物が身近にいるかもしれないと考えると怖く感じます。

ライム病自体は新しい病気なので理解がまだ十分でなく、症状も顔面麻痺や倦怠感、関節痛、記憶障害など一貫性が無く様々です。なのでライム病と判断する事が非常に難しいと言われています。

そして、温暖化が進むことで最も怖いのが私たちの体の中にいる常在菌や細菌が突然変異で牙をむく事です。これは気温上昇が1℃や2℃では起こらないと予想されていますが、実際に他の動物では確認されており、ないとも言い切れないです。

これは2015年にサイガという動物に起こった話ですが、わずか数日で全個体の内2/3が死んでしまいました。この大量死の原因は色々な説が言われましたが、有毒物質などは体内から検出されませんでした。この大量死の犯人は、偏桃にいるパスツレラ・ムルトシダという細菌だという事がわかりました。この細菌は何世代という間サイガの体内でおとなしくしていましたが、突然異常増殖し血液から肝臓・腎臓・脾臓に回り感染症を引き起こしたと言われています。そして、サイガがいた環境は温度も湿度も異常に高く、特に湿度は観測を始めて以降最高だったとの事です。また、以前にも小規模ながら多数の個体が死んでいるという事案はあったとの事です。その時も気温が高く湿気が多い日に起こったと言われています。

気候変動は我々の外の問題だけでなく、いつも仲良く一緒にいる細菌などにも影響を与えて、もしかしたら牙をむく日が来るかもしれません。そうした時、人間はどう対処すればいいのでしょうか?また、昨今は新型コロナウイルスなど以前からあったウイルスが形を変えて脅威となっています。新型コロナウイルスの発生は諸説ありましたが、もしかしたら温暖化の影響もあるのかもしれませんね。

その他にもまだまだ気候変動による世界への影響は見られていますが、記事が膨大になるので気候変動の影響について書くのはここまでにしようと思います。次は、気候変動に対して出来る事は何だろうというのを本書の内容を踏まえて書いていこうと思います。

これからの地球を変えるために

今まで書いてきた影響は、実際に起こった事や今後起こるであろう事をかいつまんで紹介してきました。しかし、気候変動についてはすべてがわかっているわけではありません。なので、あくまでも予測の範囲での話になります。

現状のままであれば2100年までには気温が4℃程上昇するかもしれませんし、そうならないかもしれません。もしかしたら4℃以上上昇し生物が住める環境じゃない星になっているかもしれない…など、研究者や各団体の意見は様々あります。

しかし、過去5回生物の絶滅危機があった内4回は地球温暖化によるものだとわかっているなら、何とか温室効果ガスを増やさないように又は減らすように世界が手を取って努力をしていく必要があると思います。

しかし、先進国や途上国の間でも考えや利権などで足並みが揃わず、現状で世界全体で温暖化に向けて取り組むことは難しいのではと感じてしまいます。特にエネルギー資源国家や火力発電などに力を入れていた国が、すぐに別の政策をだして方向転換するのは現実的ではありません。

そして、本書では問題解決に対して具体的な内容は示されていません。大まかな内容としては、税制を使って化石燃料を廃止する事、農業のやり方を変えて牛肉や乳製品に偏った食生活から脱する事、グリーンエネルギーやCO2回収への公共投資に力を入れる事などが提案されています。しかし、これは個人で行える事ではないし投資に関してもお金が莫大にかかります。やれたらいいですが、現実的に行動できる事でもありません。

そこで、ここでは私がネットなどで調べた個人でも出来る温暖化対策を簡単に紹介していきます。言われたら当たり前の事ですが、実際に行動できている人はどのくらいいるでしょうか?自分は何項目やれているか、普段の生活で気にしているかどうか当てはめながら見て下さい。

  • エアコンは必要な時以外は使用せず、暖房は設定温度28℃くらいにする。
  • 車にはなるべく乗らず、短い距離なら歩いたり自転車で移動する。
  • エレベーターは使わないようにして、なるべく階段を使うようにする。
  • テレビのつけっぱなしはやめて、見ない時は消すようにする。
  • 電灯はこまめに消す。電球はLEDの物に変えて省エネにする。
  • トイレの水を流す時に、『大』と『小』を使い分ける。(大1回で約4ℓ、小1回で約3.5ℓ水を使用する)
  • 歯磨きの時に水を出しっぱなしにしない。
  • ゴミを分別して捨てる。空き缶や瓶・新聞紙・ペットボトルなどはリサイクルに出す。
  • 食べ残しや油を流さないようにして、海や川が汚れないようにする。

その他にもたくさん自分で取り組めることはありますが、家の中で取り組める簡単なものを幾つかあげてみました。皆さんはいくつ取り組めているでしょうか?私は最近晴れた日の通勤は自転車で行くようにしました。しかし、歯磨きの時に水を出しっぱなしにしたり、電気の消し忘れがあるのを妻に注意されることが多いです。この本を読んだ後なので、なおさら注意して取り組んでいこうと思いました。

まとめ

本書では、気候変動による様々な脅威を中心に書いており、今後気温上昇が続いたら地球に住む人の多くが住む場所に困ったり多くの陸地が海に沈むかもしれないなど、リアルに怖い内容が書かれていした。最後に紹介した内容を簡単にまとめて終わりにしようと思います。

  • 大量絶滅の危機が過去5回あったが、その内4回は温室効果ガスによる地球温暖化が原因。
  • 今存在するCO2の内、半分以上は直近30年のうちに排出されたもの。
  • 世界でも気候変動に対する取り組みを行っており、各国が協力する体制も以前より整ってきている。パリ協定を結び、各国のCO2排出量削減を目標に取り組んでいるが、現状は目標を達成できている国はほとんどないのが現状。
  • 温暖化が進むことで、世界の気温が上昇し、人が住める地域が限られてくること・食料が育たなくなる・海面上昇による陸地の減少・山火事や森林伐採などによるCO2回収減や増加・海洋生物の環境の変化・新たな感染症の脅威などの問題が生じている。

この気候変動に関する取り組みは、国が主体で出来る事・企業が主体で出来る事・個人が意識して取り組めることがそれぞれ違うので、まずは個人で出来る事をやっていくことが温暖化に対する取り組みの1歩だと感じました。

本書では多くの気候変動に関する問題や実際に発生した多くの災害を例に話が進んでいきますが、具体的な対処法や問題解決のヒントなどはほとんど書かれておらず、読んだ人に『何もしないと今起きている災害が日常的な出来事になっていきますよ。どうしますか?』と問われている様な気持ちになります。あとがきでも本書を翻訳された藤井留美さんが同じような事を書かれていました。

まずは世界で起きている異常な現象と向き合い、それが温暖化によって起こっている事をちゃんと理解して受け止める事から始めないといけないと感じました。そして初めて自分でできる環境問題の取り組みを考え行動が出来る様になると思います。

スウェーデンのグレタ・トゥーンベリという女性が一時期ニュースになった事を覚えているでしょうか?彼女は15歳で『気候の為の学校ストライキ』をはじめ、16歳で『国連気候行動サミット』のスピーチを務めたことで世界の有名人となりました。

15歳で始めたストライキは、国の政府が環境問題に無関心であることに危機感を覚えて抗議するために、学校を休んでストックホルムにある国会議事堂の前でたった一人でストライキを始めました。その最中に『学校に行った方がいい』とアドバイスする大人、見ないふりをする政治家などはじめは孤独から始まりましたが、徐々に共感してくれる人が増え参加してくれる人が増えてきました。

また、サミットでのスピーチでは科学的根拠を基に気候変動に対する世界の対応を痛烈に批判しています。そして、スピーチの最後には『あなた方は私たちを裏切っています。しかし、若者たちはあなた方の裏切りに気づき始めています。未来世代の眼はあなた方に向けられています。もしあなた方が私たちを裏切る事を選ぶなら、私は言います。「あなたたちを絶対に許さない」と。ここから逃げる事は許しません。世界は目を覚ましており、変化はやってきています。あなた方が好むと好まざるにかかわらず…ありがとうございました』と締めくくっています。まだ未成年なのに、ここまでの事を世界の場で発言できる事がすごいと感じます。そして、グレタさんの事を調べた後に、自分の子供にも同じことを感じさせてしまう世界になるのかと考えると、何か申し訳なく感じてしまいます。

未来世代の子供たちが安心して暮らせる未来となる事を望みながら、今自分に何ができるのかを考えて行動していければと本書を読んで改めて感じました。自分の行動が子供の手本となるように、世界に少しでも貢献が出来る様に塵積の精神で環境問題に取り組んでいこうと思います。

最後に、この記事では本書の内容のすべてを紹介はできておらず、まだまだ伝えたい事もたくさんありました。この記事を読んで本書の内容が気になった、全部読んでみたいという方は、是非本書を手に取ってすべての内容を読んで頂ければと思います。長文になりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。

ABOUT ME
KENP
30代で2児の父。子供が誕生してから、自分の一般常識や知識の低さに焦りを覚えて読書をするようになる。読んだなかで将来子供の為になりそうな本を紹介したいと考えブログを立ち上げる。年間読書20~30冊くらい。 趣味:読書・麻雀(オンラインゲーム)