今回紹介する本は、青山学院大学講師の奥山真司さん監修『サクッとわかるビジネス教養 地政学』という本です。
この本は一言でいうと『歴史や今の世界情勢が地理的な観点から理解できる』本です。最近ニュースになどで「地政学」という言葉をちらほらと耳にする機会が増えました。私は言葉だけは知っていましたが、具体的にはどんなものなのかわからない状態でした。
とある動画で本書を紹介しているのをみて、興味を持ったので購入し読んでみることに。今まではニュースを見ていても色々な国が行っている政策や国のトップの人の発言などわからないことがほとんどでした。しかしこの本を読んだ後にニュースを見ていると、「地政学的にはこの国はこうしていきたいのかな?」など少しですが世界の動きの一端を理解できるような気持ちになれました。
本書はイラストが多いのでイメージがしやすく、小中学生や地理・歴史が苦手な大人の方でも理解しやすい内容だと思うので、おススメできる1冊です。その中から今回は地政学の全体的な考え方と、私たちが住んでいる日本の地政学的な特徴などの内容をかいつまんで紹介しようと思います。
目次
- 地政学ってなんですか?
- 地政学の基本ルール
- 日本の地政学ってどうなってるの?
- まとめ
①地政学ってなんですか?
そもそも地政学とはなんでしょうか?私が学生の頃には聞いたことがない言葉でした。比較的最近になって言葉を聞く機会が増えてきたので、最近できた新しい学問なのかと思っていましたが、本書を読んでいくとかなり前からこの地政学は研究されているものだと知りました。
結論から言うと、地政学とは『地理学と政治学を合わせて考えられるもので、国同士の地理的な条件が政治的・軍事的・経済的なさまざまな要因に与える影響を研究する学問』です。簡単に言うと、国によって地理的な特徴が違うので、その特徴を生かしながら隣国や遠い国などとの関わり方をどうすればいいのかを考える学問という解釈で良いかと思います。
元々は古代から争いなどがあった中で地理的なセオリーは存在していましたが、この考えを戦略的に初めて活用したのが1800年代後半のプロイセン王国(現在のドイツ)であったと言われています。元々勤勉な気質のドイツ人は土地の測量や知識を積み重ねていき、地理的な優位性などの重要性を他の国よりも理解していたと思われます。そして地政学的な戦略を使い戦いに勝利を重ねていき、プロイセン王国は当時の大帝国だったフランスとの普仏戦争(1870~1871年)で勝利しドイツ帝国を成立させました。
こうしてドイツだけでなくその他の国も地政学大事だ!という事に気づいて『国際紛争や外交の時に地政学的な理解が重要。研究していかなければ!』という機運が高まったと考えられています。
その後地政学は色々な国が研究する中で、日本でいう明治時代(1862~1912年)あたりにアメリカのマハンという軍人さんが『シーパワーとランドパワー』の概念を提唱。次にイギリスのマッキンダーという学者さんはマハンの主張を継承しながら『ハートランド』という概念を提唱。その後第二次世界大戦の時代にアメリカのスパイクマンという学者さんが、『リムランド』という概念を提唱され、地政学の基礎が完成し体系化されていきました。この考え方が、今の外交戦略でも活用されています。
よくわからない横文字がたくさん出てきて嫌になった方もいるかと思います。私は横文字アレルギーなので最初読んでいてで頭に『???』がたくさん浮かんでいました。しかし安心して下さい。次の章からこの言葉の意味を含めて地政学の内容を紹介していきます。この言葉がわかる事で地政学の理解がグッと深まりますので、一緒に勉強していきましょう。
②地政学の基本ルール
地政学では基本的に6つの概念があります。前の章でも少し触れましたが、横文字の普段聞聞きなれない言葉が多く出てきて、最初は抵抗があるかと思います。しかし、これらがわかる事で地政学の基礎がスムーズに理解できます。あまり難しい内容ではないので、ここで理解できるように一緒に勉強していきましょう。
- 地政学を使った国同士のコントロール
- バランス・オブ・パワー
- チョークポイント
- ランドパワ―とシーパワー
- ハートランドとリムランド
- 他国をコントロールする拠点の重要性
基本的な概念はこの6つです。いやいや、さっきより横文字増えましたけど…と思われた方がいるかと思います。本書を読んでいた私も最初思いました。しかし、解説を読んでいくとすべて繋がっている概念なので頭に入ってきやすかったです。これからこの6項目を1つづつ紹介していきますね。
地政学を使った国同士のコントロール
最初にお伝えしたい事は地政学のメリットです。これは『自国を優位な状況に置きながら相手国をコントロールするための視点を得られる』ことです。このメリットこそ各国が地政学を研究する最大の理由だと考えられます。この言葉だけではイメージが着かないと思いますので、少し例を出します。
今まで自分の国が繫栄するために、他国の領土を奪って制圧し自分の国の物にしてコントロールしていく、という歴史が繰り返されてきました。たとえば「自分の国では穀物とか果物なんかの食べ物が多く収穫できるけど、隣の国では鉱物や海に近いから魚とかも取れるみたいだな。いいなー…よし!奪って自分の国にすれば全部手に入る。相手の国に打って出るぞ!」、みたいな感じです。しかしこれは、争いに負けたら国そのものが滅んでしまうというメチャクチャに大きいリスクもあります。
しかし地政学を利用すれば、戦争という大きなリスクを負わなくても、相手国から原材料を安く買ったり、逆に自国で作った製品を高値で売ったりするなどで経済的に優位に立つこともできます。その他にも相手国の政治に関与することができれば、自分の国に有利な法律を作るという方法もあるわけです。貿易時に相手国が陸路で商品を運びたいという時は、関税をかけて税収を多くとったりもできるわけですね。(ただし、現在は各国で世界貿易機関(WTO:World Trade organization)が一定の税税率を定めている為、加盟国では税率がある程度決まっています。なので国力が強い国が一方的に弱い国に対して、経済的な圧力を加える事が出来ない仕組みがあり好き勝手な税金の設定は難しい)
今回は経済的な面で話をしましたが、地理的な特徴でいえば日本は国土面積はあまり大きくはありませんが、海に囲まれた島国で陸地の国境が他国と繋がっていないなどの特徴があります。日本と対比として、ロシアは世界最大の国土面積を有しており日本の約45倍あります。他国と陸地で国境が接している国が14か国あるなどの特徴があります。極端な例ですが、他にも輸出品や軍事力なども含めて地政学では大事な情報になってきます。
また、国家の振る舞いは『利益』『恐怖』『名誉』などリアルな本能の部分が関わってきます。地理的な側面から国の振る舞いを検証する地政学を学んでいくことで、国の本音が垣間見えるのではないでしょうか?
②バランス・オブ・パワー
地政学を知る最大のメリットは、”相手国をコントロールする”事にあると先ほど書きましたが、その上で大切になるのが『バランス・オブ・パワー』と後から紹介する『チョークポイント』です。ここではバランス・オブ・パワーについて説明していきます。
バランス・オブ・パワーを日本語にすると『勢力均衡』です。これは、突出した力を持った国を作らない事で国の力を拮抗させて秩序を保つメカニズムの事をいいます。
例えば、A国という国が軍拡を行う事でその周りの国は攻め込まれるかもしれないと緊張が高くなります。すると、A国の周りにあるB国・C国・D国も軍拡を行ったり、有事の際は助け合うという同盟を結んだりすることで力の拮抗を図るなどして、A国が攻め込んでこないように画策します。これのわかりやすい例に、NATO(北大西洋条約機構)を紹介します。この条約は、ヨーロッパの各国がロシアが攻め込んでくる事に対抗した軍事的な同盟です。ロシアは軍事力世界2位を誇ります。そんな国にもし攻め込まれたらひとたまりもありません。そこでヨーロッパの国々は攻め込まれた際に互いに助け合いましょうという同盟を結びました。これがNATOです。NATO設立時は12ヵ国でしたが、現在は30ヵ国も加盟しています。なのでもし加盟国に攻撃しようものなら、30ヵ国を敵に回すことになるので手を出しづらいですよね?こうして力を拮抗させて平和を維持しているのです。
過去には冷戦時代に1位のアメリカと2位のソ連が敵対しあっていました。そこでアメリカは3位の日本と手を組み力の拮抗を図ります。その後は冷戦にソ連が負けて国が崩壊し、ソ連から色々な国が独立する事になります。また、1990年代には先ほど手を取り合っていた1位アメリカとソ連がいなくなった事で2位に台頭してきた日本が対立します。すると今後は3位の中国とアメリカが手を取りあい日本との力を拮抗させる措置を取ります。2010年代からは、このパワーバランスが変わって1位アメリカと2位の中国が現在進行形で対立しています。そこで3位の日本とアメリカが協力して中国の力をコントロールしようとしています。
この考えは『1位の国が勢力を増してきた2位の国に対して、3位以下との協力しながら2位を挟み込んで国力を削ぐ』というものです。このバランス・オブ・パワーでかつて世界の覇権を握っていたのが大英帝国(今のイギリス)です。イギリスはヨーロッパで唯一の島国ですぐに攻め込まれないという特徴があります。その他のヨーロッパ国は互いに国境が陸地で接している為、攻め込まれやすく争いが起きやすいという特徴があります。国力が大きくなってきた国がいると、イギリスは周りの国を援助する事で国同士の力を拮抗させたり、攻め込ませたりすることで国力を削るなど、周りと協力関係を結びながら戦い世界を制していきました。
個人レベルでも国レベルでも”出る杭は打たれる”という事ですね。お互いに力が突出しないように警戒しあって、世界のバランスを保とうとしているんだと感じます。その中で現在日本はアメリカと一緒に中国をけん制するという立場にあります。これは経済的にもそうですが、最近耳にする”台湾有事”も絡んでいると思われます。これからの日本の立ち振る舞いが世界に影響を与えてくる事になるかもしれません。ニュースなどで今後の流れを注視していきたいですね。
チョークポイント
相手国をコントロールするのにもうひとつ大事な事はチョークポイントを押さえるという事です。チョークポイントを考えるなかで『ルート』を知る必要があります。
ここでいうルートとは海上交通で使う場所で海路の事です。現在はグローバル化が進んでおり色々な物が国でやり取りされる様になっています。物を運ぶのに一番効率が良いのが”船で運ぶ”方法です。貿易での輸送方法では陸路・海路・空路があり、それぞれで一長一短ありますが、最も一般的に利用されているのが”船(海路)”です。理由としては運賃が安く一度に大量に物を運べるからです。運べるものが少ないと何回も往復する必要があり、そこに必要な金銭的・時間的なコストが増えるからです。なので大規模な物流は海路で行われることが多く、国を運営するにあたり海路を使用する事は経済を回すうえで必要不可欠であることがわかるかと思います。
そしてチョークポイントとは、海上のルートを航行する上で絶対に通る、海上の関所の事をいいます。具体的には、陸で囲まれた海峡や、補給の関係上必ず立ち寄る場所で、世界に10か所程存在すると言われています。なので、”チョークポイントをおさえる=他国をコントロールできる”事に繋がります。
現在、世界の多くのチョークポイントを抑えているのがアメリカの海軍です。アメリカが世界の覇権を握れているのは、チョークポイントやルートを抑えているからだと言われています。
日本はエネルギー資源のほとんどを中東の国から輸入していますが、いくつかのチョークポイントを通過する必要もあり、日本にとっても大事なことなのです。また後ほど紹介していこうと思います。
ランドパワ―とシーパワー
地政学の基礎的な概念で『ランドパワ―』と『シーパワー』があります。これは国の属性のようなもので、各国がどちらかの属性を有しています。
ランドパワーとは、ユーラシア大陸にある大陸国家の事を指します。大きな国でいえばロシア、中国、ドイツ、フランスなどですね。
一方シーパワーとは国境の多くが海に囲まれた海洋国家の事を指します。イギリス、日本、大きな島国とみなされるアメリカなどが該当します。
歴史から”ランドパワーとシーパワーは両立できない”という事が言われています。昔から大きな力を持ったランドパワーの国が、更に勢力拡大を目指して海洋進出する流れがあります。そして、自分たちのフィールドを守るシーパワーの国と衝突をする…という流れが繰り返されてきています。大きな国際紛争はこのランドパワーとシーパワーの違う属性の国家のせめぎあいが多いようです。
そして、シーパワーとランドパワーは両立が出来ない事も歴史から見て取れます。古くはローマ帝国がランドパワーの国として勢力拡大していきましたが、更なる拡大を目指して海洋進出をしましたがそれが原因で国力が低下し崩壊しています。そして日本もかつては朝鮮半島や中国などの大陸に手を伸ばして失敗しています。
国際情勢の関するニュースをみたときに、その国がどちらの属性なのかを考える事は非常に重要な視点となります。現在中国が”一帯一路構想”でインド洋を使いたいという思惑でインドと争ったり、太平洋まで影響力を持とうとして台湾を自国の領土と主張して併合しようとしているのもランドパワー属性の中国が海洋進出でシーパワーの属性まで手にしようとしていると考えられますね。しかし、歴史は両方の属性を手に入れようとしたら失敗しているという歴史があります。なので、これから中国がどのようなアクションを起こすのか?どちらも両立が出来るのか?という視点でこれからの歴史をみていくとニュースの見方も変わるかもしれませんね。
ハートランドとリムランド
先ほどのランドパワ―とシーパワーは、国がどちらの属性なのか?という視点の話でした。次は地球全体の視点から見た『ハートランド』と『リムランド』について話をしていきます。
まず、ハートランドとはユーラシア大陸の心臓部分の事を指し現在のロシアあたりの地域のことをいいます。ハートランドは”寒冷、雨が少ない、平坦な平地が多い”という特徴のエリアです。古くから人口が少なくあまり栄えていません。
次にリムランドですが、ユーラシア大陸沿岸部からロシア付近までのエリアを指します。リムランドは”温暖、雨が多い、経済活動が盛んである”という特徴のエリアになります。このエリアに世界の多くの大都市があり、人口が集中しています。そして他国に影響力を与えるためにはこのリムランドのエリアの支配が重要になります。
ハートランドに属する国々は必然的にランドパワーの属性を持ち、リムランドである沿岸部の国々はシーパワーの影響が大きいという特徴があります。そして歴史上厳しい環境にあるハートランドの国は、豊かな環境のリムランドの国に侵攻しています。
そして現在、ロシアがウクライナに対して侵攻しているニュースが報道されていますが、これも、EU圏のNATOとロシアの中間にあるウクライナで戦争となっており、ハートランドのロシアとリムランドのウクライナという構図となっていることがわかります。ウクライナという土地は、過去にも度々戦争の場として衝突が多い土地になりますが、このハートランドとリムランドのせめぎあいの場になりやすい地域という考え方が出来ます。
なので、紛争が起きやすい地域というのは、このハートランドとリムランドが交わる場所に多いという事が言えると思います。なんで戦争なんかするのかと以前は思っていましたし、今も良い事ではないと思いますが、国としての属性や思惑がある事が本書をみて少しわかったような気がしました。
他国をコントロールする拠点の重要性
相手をコントロールしようとした際に、もうひとつ重要なのが”拠点”をつくるという事です。コントロールしたいエリアに影響力を与えたいときは、その近くに拠点を作ってレーダー監視をしたり軍隊を駐屯させたりすることが有効です。
身近な所では、日本の沖縄にある米軍基地がそれに当たります。この基地がある事により中国や北朝鮮に対して影響力を及ぼす事を目的としています。そして日本にはもうひとつ、横須賀にも米海軍の基地があり、ここは西太平洋地域への影響力を持たせる拠点となっています。
また、2014年にはロシアとウクライナで争いがあり、ロシアがクリミアを一方的に併合した歴史があります。ここはロシアが国の南側から海に出るために影響力を持ちたいエリアでした。併合以前はウクライナに借地料を支払ってセヴァストポリ港を借りて黒海の監視をしていましたが、併合後は港を自由に使用できるようになり大西洋へ出るために入り口の黒海を完全に掌握しました。その為にクリミアは拠点として手に入れたい場所であったと言われています。
③日本の地政学ってどうなってるの?
前の章では地政学の基礎的な知識を中心に話をしてきました。それでは、ここからは自分たちが住んでいる日本の地政学について学んでいこうと思います。地政学がわかると日本の歴史もわかってくるので、歴史を地理的な視点から見る事が出来て面白いですよ。
前の章の知識がある事で、今の日本の問題やどうしてこうなってるのか?などがわかってくると思います。
- 地政学的に見た日本の歴史
- ロシアとの北方領土問題
- 米軍基地がある理由
について簡単に触れていこうと思います。
地政学的に見た日本の歴史
日本は元々は日本国内で領土を拡大して天下統一をするまでほとんど海外の国と衝突が無く、島国内での争いが多いランドパワ―の属性を持つ国でした。
しかし、明治時代以降は海洋進出をはじめランドパワ―とシーパワーの両立をしようとしましたが、戦争に敗戦しそれは叶いませんでした。そして現在はアメリカ(シーパワー国家)の同盟国としてシーパワーの属性の国となっています。また、極東に位置する日本はヨーロッパ諸国から最も遠い位置にあったため侵略されなかったことも地理的に言えるでしょう。
なので日本は①ランドパワ― → ②ランドパワ―&シーパワー → ③シーパワーと変わってきた歴史があります。
ロシアとの北方領土問題
第2次世界大戦後ロシアに北方領土を取られてしまいました。それから幾度となく日本政府が返還要求をしているものの、なかなか実現が難しい問題となっています。それにはいくつか理由があると本書で書かれています。
- 北方領土がアメリカと中国をけん制する拠点
- 2000年頃から航行可能となった『北極海ルート』を守る盾になっている
- 日本にとっての地政学的なメリットがあまりない
国際法的には北方領土は日本の領土という扱いのようです。ロシアの懸念としては、もし返還後に北方四島のどこかに米軍基地が建設されるとすぐ近くにアメリカの脅威があることになり、これは絶対に避けたい状況です。
また、北方領土には軍の拠点があり、アメリカや中国の動向を探るなど監視しているともいわれています。
そして2000年頃からロシアと北極の間の北極海が通行可能となり、ヨーロッパ方面への航路が開拓されました。そのルートの盾として北方領土の価値が高くなったと言われています。北方領土はこうした理由から軍事的・経済的な意味でロシアにとって必須のエリアとなっています。
一方、日本は仮に北方4島を返還してもらえたとして、どのようなメリットがあるでしょうか?以前住んでいた人が自分の故郷へ帰れる、国民感情が好転する、漁業を行える海域が広がる事で海産物を取る量が増えるなどが考えられますが、国としての大きなメリットがあるわけではありません。なので絶対にこのエリアが必要だというロシアと、返還してもらえたらいいなという温度感の日本では現状が変化しない事が考えられますね。
米軍基地がなぜあるのか?
日本には米軍基地が2つあり、1つが沖縄県の基地で、もうひとつが神奈川県にある横須賀の基地があります。それぞれに拠点としての影響範囲が違います。
まず沖縄の米軍基地についてですが、主に中国やロシア、中東、ヨーロッパ等の国の動向を監視する拠点重要な拠点となっています。沖縄の米軍基地は完璧な拠点と言われています。理由は4つあります。
- 世界の主要都市が射程圏内(アメリカのICBM(大陸間弾道ミサイル)を置くと、アジア全域・オーストラリア全域・中東・モスクワ・ロンドンなどほぼ世界の中心都市が射程圏内に入る為、他国への威嚇になる)
- アメリカ人の感情(沖縄という土地はアメリカが戦争で勝ち取ったという意識があり、他国の領土という心理的な負荷が低い)
- 基地設備(ジャングル戦の模擬訓練施設や最新の戦闘機配備など基地の設備配備が世界最高レベル)
- 社会資本・安定性(他の国と比べインフラが整っており、情勢も安定しているので着実な軍の運用ができる)
この4つの理由から沖縄の米軍基地は完璧な拠点といわれている様です。
一方、横須賀基地は主に太平洋やオセアニアの監視をする拠点の意味や、軍艦・空母など大型の船の修理やメンテナンスが行える世界最高峰のドライドックという施設がある事も特徴です。この拠点から世界中の海へスムーズに展開するための要所になっています。
今紹介した理由はアメリカにとって都合がいい事でしたが、日本にとって米軍がある意味とは何でしょうか?日本にとっての1番の意義は、石油ルートの保護です。石油は日本の経済を回すために必要不可欠なエネルギー資源ですが、そのほとんどを中東の国(約90%)に依存している状態です。中東まで行くルートにはホルムズ海峡とマラッカ海峡の2つのチョークポイントを通る必要があります。そこで問題なのが、そのルートには危険がいっぱいで安心して輸送ができない点です。
ホルムズ海峡はアラブ首長国連邦とイランとの間にある海峡で海賊が出現する危険な場所です。そして2019年に日本とノルウェーの企業が運航する石油タンカーが襲撃されるなど実際に事件もあり、この時はイスラム国が犯行声明を出していました。
マラッカ海峡は近年中国軍が進出している場所になりそこも危険な海域となっています。そんな状況下でこのルートを守ってくれているのが米海軍です。アメリカが”世界の警察”と言われているのは、海の秩序を守る米海軍の事を示しています。
日本にとって米軍基地がある事で近海の国や遠方の国に対しても抑止力となっています。自国だけで自衛するとなると、軍備費用も今のままでは足りないと思います。そこにあるだけで日本の防衛力が高くなっていると考えたら、助かってる部分が多いのではないでしょうか?
④まとめ
長くなりましたが、今回のまとめになります。
- 地政学とは地理と政治を絡めた学問
- 他国をコントロールするために『バランスオブパワー』と『チョークポイント』が大切
- 歴史的な戦争はランドパワ―の国とシーパワーの国のせめぎあいが多いこと、ハートランドとリムランドとの堺でおこりやすい
- 他国への影響力を持つために拠点をどこに置くかが重要
- 日本はランドパワ―の国だったが、敗戦後シーパワーの国となっている
- 日本にある米軍基地は世界に対しての抑止力となっている
今回は本書のさわりの部分と日本の地政学についてまとめてみました。内容は地政学の初歩中の初歩という感じでしたが、普段から地政学について考えたことがない私でもイラストの多さやわかりやすい説明文もあり非常に理解しやすかったです。
また、今回照会内容の他にも『中国・ロシア・アメリカの地政学』や『アジア・中東・ヨーロッパの地政学』など世界の主要な国の地政学的な視点から説明されており、ニュースでよく聞く言葉の意味も理解できる内容でした。
もしニュースを見た自分の子供に、内容について質問されたとしたら学校では教わっていない視点で教えられるので、親子ともに知識が増えるのではないでしょうか?
長文になりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。