今回紹介する本は、サン=テグジュペリが書いた作品の『星の王子様』です。
この本を一言でいえば『生きるために大切な事とはなにか?』を教えてくれる本です。
1943年に初版が発売され、その後もたくさんの再販を重ねて長く読み継がれています。この本魅力は子供向けに書かれており読みやすい内容で、作者本人が書いたかわいらしい挿絵も使われているので、イメージが着きやすいのも読みやすさの一助となっています。また、大人が読んでも考えさせられる素敵な言葉がたくさん詰まっていて、その時の感情や各年代ごとで受け取り方の変わってきそうな作品となっていて、何回も繰り返して読みたくなります。私は子供にもいつか読んで欲しいと思う一冊です。
今回は本書の魅力をなるべくわかりやすく簡単にお伝えできればと思います。大まかな内容や私の解釈・感想も書いていきます。本書の魅力が伝わるようにしていこうと思うので、最後までお付き合いいただければ嬉しいです。
もくじ
- 作者紹介
- あらすじ
- 6人の星の人
- 地球での出会い
- 王子様の旅立ち
- おまけ ~本書の名言3選~
- まとめ
①作者紹介
作者はフランス人で、本名は”アントワーヌ・マリー・ジャン=バティスト・ロジェ・ド・サン=テグジュペリ”です。名前長いですね(;^ω^)
紹介では短くして”アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ”と書かれている事が多いかと思います。
職業は飛行機の操縦士で郵便輸送を行う傍ら、小説家として執筆活動をしていました。本作【星の王子様】は、自身が飛行中にサハラ砂漠に飛行機墜落事故で不時着したことがきっかけと言われています。
本書の冒頭でこの作品は”レイン・ヴェルト”という親友に捧げますと書かれています。レイン・ヴェルトとはサン=テグジュペリの世界で一番の親友でよき理解者でした。そして、寒さと餓えに苦しんでいる友人にこの本を捧げたいと書かれています。
レイン・ヴェルトは、サン=テグジュペリとは22歳も年上で、ユダヤ人でした。本書を書いていた当時は第2次世界大戦中で、当時ユダヤ人はナチス政権による弾圧の的となっており、レイン・ヴェルトは山荘に隠れ住んでいたそうです。サン=テグジュペリは友人の境遇を心配して、この作品を彼に送ったんだと思います。
そして、サン=テグジュペリ本人は第2次世界大戦でフランス空軍に入隊しましたが、大戦中に飛行機事故で消息を絶っており、その後戦死が確認されています。
②あらすじ
この物語の主人公の「ぼく」は現在パイロットで世界中を飛び回っている。昔は偉大な画家になろうと思ったこともあった。ボアという大きな蛇がゾウを丸飲みした作品を描いた第一号の絵を大人たちに『この絵どう?怖くない?』と見せてみたけど、大人たちはその絵を見て『帽子の何がこわいのか?』と言ったり、絵について説明してもそんな事はいいから勉強しろと言われます。なので画家は早々に諦めてパイロットになりました。
そんな「ぼく」は飛行機のエンジンの故障が原因でサハラ砂漠に不時着してしまいます。人里から1000マイル(1マイル=1.6㎞なので約1600㎞)離れている場所で、一人ぼっちです。途方に暮れ、エンジンの修理など行ったあとで砂の上で眠っていました。すると夜明けに突然声をかけられます。『すみません、ひつじの絵を描いて』と。そこには不思議な子供が1人。この子供が「星の王子さま」です。その子供にぼくが昔描いた第一号の絵を見せたところ『ダメダメ。ボアに飲み込まれたゾウなんて欲しくないよ。~中略~僕が欲しいのはひつじなの。だからひつじの絵を描いて』と言われ「ぼく」はびっくりします。それからひつじの絵を描いてあげるものの、何度もダメ出しをされてOKがもらえません。そこでぼくは、1つの箱を描いて渡し、その中に君のひつじがいるというと、王子さまはすごく喜びました。これが「ぼく」と「星の王子さま」との出会いでした。
それから話をしていくと、その王子さまは他の星から来たことがわかります。そこで自分の星のことや地球に来るまでに色々な星に行き出会った人のことや、地球に来てからの事など王子様について少しづつ知っていきます。
王子さまの星はとても小さくて少し大きいお家くらいの大きさです。小さな火山が3つありその内1つは死火山です。バオバブの木が生えてきて、大きくなってしまうと根を張って王子様の星を壊してしまいます。なので、小さなうちにバオバブの根を引っこ抜くことが王子様の日課だそうです。ひつじを欲しがった理由は、バオバブが小さなうちに食べさせ大きくしないようにしたいからでした。ある日、王子さまの星で見たことがない植物と出会いました。それが「バラ」の花です。バラが綺麗で王子さまはすごく感動しました。しかし、バラと話をするうちにその花はあまり謙虚ではない事に気が付きます。そのバラの事で悩むことが増えていきます。そのバラを愛していて何でもしてあげようと思っているのに、いちいちバラの言葉を真剣に受け止めてはつらい思いをしていました。そしてついに、王子さまは自分の星から離れる決意をします。最後にバラにさよならを言った時に、王子さまは泣きそうになっている事に気が付きます。バラは旅立つ王子さまに向かって『私バカだったわ』、『私を許してね。あなたの幸せを見つけてね』と言います。王子さまは怒っていない事にびっくりします。『私はあなたを愛しているわ…あなたが気付かなかったのは私のせいだけど、それはどうでもいいの。あなただって愚かだった。幸せになってね』といって送り出され、王子さまは自分の星から旅立ちました。
星を出てからは見聞を広げるために近くの星を訪ねて回る事にしました。6つの星に立ち寄り、6人の星の住人と出会います。各々が個性的な大人でしたが、王子様は関わっていく中でその住人たちのやっている事が理解できません。大人はかわってるなと感じながら次々に星を巡り、6番目の星で出会った人に地球をすすめられてたので地球に行くことにしました。
地球に来てから最初に出会ったのは蛇でした。蛇と話をしてここはアフリカの砂漠だといいました。人に会いたいというと、砂漠に人はいないと言われます。砂漠で一人で寂しくないのか尋ねると、人の間にいたって寂しいと言われます。話をする中で、最後に蛇から『いつか自分の星への思いが募ったら、君を助けてあげられる。君を…』。その後は沈黙が続き、そして旅立ちます。それから王子さまはたくさん歩いていくと、やがて1本の道路に行き当たります。そこをたどって歩いていくと、その先にはたくさんのバラが咲き乱れる庭園がありました。それをみて王子さまはとても悲しい気持ちになった。彼の星にあったバラは世界に1本だけの種類だと信じていた事や、その珍しい花を持っていた自分は豊かだと信じていたけど、それが違っていたとわかったからです。
悲しみに暮れている時にキツネとの出会いました。悲しい気持ちを紛らわすために、王子さまはキツネに遊ぼうと声を掛けます。しかし、キツネには断られてしまいました。ここからキツネと話をする中で、王子さまは自分にとって本当に大切なものや自分の本当の気持ちに気が付きます。そしてキツネと別れてまた旅立ちました。
それから色々と回って「ぼく」の所に来たのです。その時砂漠で遭難してから8日目でした。最後の水も飲みほして、いよいよヤバい状況です。歩きながら水を探して2人で歩きます。しかし、水は見つからないまま夜になり、2人座り込みます。王子さまは『『砂漠がきれいなのはね、どこかに1つ井戸を隠しているからだよ』といいました。ぼくはこの状況ではじめて目には見えないことの大切さに気が付きます。王子様の考えている事が少しわかります。そして王子さまにとても心を揺さぶられて、王子さまがとても壊れやすいように見えました。そうして歩いた先に、やっと井戸を見つけました。その後井戸の水を飲んでから、話をしていき、明日王子さまは自分の星に帰ると言いました。王子さまは井戸の所で待ち、ぼくは飛行機の修理に戻ります。
次の日に奇跡的に飛行機が修理できました。そのことを報告しようと井戸の所に戻ります。すると王子さまが誰かと話をしています。ぼくは覗き込むと、そこには王子さまが地球に来て初めてあった蛇でした。王子さまは蛇にかまれており、毒が体を回っています。しかし王子さまは焦る様子はありません。ぼくが慌てて駆け寄って王子さまを抱きしめます。王子さまは自分のバラに責任があるから、星に帰らないといけないと話をします。しかし、星に帰るには自分の体は重過ぎるから、その殻を脱ぎ捨てて花の所に帰らないといけないと言います。そして、王子さまを抱きしめたまま夜になると、王子さまは音を立てないようにしていきました。
そして物語は終了します。あらすじなのでざっと書きましたが、多くの登場人物と出会い会話する中に、王子さまや登場人物の人間性や心に残る言葉がたくさんありますので、ぜひ本書を手に取って頂きたいと思います。
③6人の星の住人
王子さまが自分の星を出てから地球に来るまでに6個の星に寄り、6人の星の住人とそれぞれ出会い話をしています。
1番目の星には、1人の王様が住んでいました。この王様は『権威を保つ』事が1番大事だと思っている王様で、何を話すにしても『~を禁ずる、~を命ずる』など上からの目線で話をしたり、全部の星を自分が統治していると王子さまに話をします。
2番目の星には、うぬぼれ屋の男が住んでいました。この人は、自分の都合がいい言葉しか耳に入ってこないような、めんどくさいタイプの人でした。
3番目の星には、酒飲みの男が住んでいました。王子さまは何でお酒を飲んでいるか尋ねます。彼は『恥ずかしい事を忘れるため』と打ち明けます。王子さまは助けてあげたい気持ちで何が恥ずかしいのか尋ねます。そしたら『酒を飲むことが!』と言い、あとは自分の世界に閉じこもりお酒を飲み続けました。
4番目の星にはビジネスマンが住んでいました。ビジネスマンはとにかく忙しく仕事をしていて時間に追われています。そして、仕事を忙しくしているから私は重要人物だと会話の合間合間で主張してきます。しかし、仕事の内容を王子さまは本当に重要ではないと感じます。
5番目の星には街灯と点灯夫がいるだけの小さな星でした。王子さまは点灯夫と話をしてみますが、話の合間にも点灯夫は街灯を灯したり消したりを繰り返します。どうしてつけたり消したりするのかを尋ねると、『規則なんだよ』と言われます。この点灯夫は1分の間に1回は灯して、消してを繰り返しています。その仕事になんの疑問を持たず『規則』に縛られて行動を続けています。しかし、王子さまはこの点灯夫に好感を持っていました。それはこの人だけが他の星の4人と比べて自分以外の物を世話していたからです。
6番目の星には地理学者の老紳士が住んでいました。この人は探検家の話をもとに地図を描いています。王子さまはこの星に海や山や砂漠があるかを尋ねましたが、答えは『知らない』でした。なぜかいうと、この地理学者は書斎から出たことが無く、実際目で見たことが無いからです。それから、王子さまの旅の話をきいてきました。自分の星の事や綺麗なバラがあった事を話すと、地図には花は書かないと言われます。王子さまにとってバラの花はとても大切なものだったのでびっくりしました。なぜか尋ねると、花ははかなくて短い間に失われるものだからだと言われました。そこで初めてあの花は失われるものなのかと知り、王子さまは花を一人ぼっちにして置いてきたことに後悔の気持ちが出てきました。そして、次に行く星は地球いいと地理学者に勧められ、地球に向かうのでした。
ここでの6人は、個性的な人がばかりでしたが意外と自分の身近にもこんな人いるなという感想が読んでてありました。これは大人が陥ってしまう姿の一部を現していると感じます。
王様のように、自分の権威を主張するように周りに対して『自分は人に命令を出して動かすことができる。えらい人間なんだ』と相手やその周りの人に影響力を持とうとする人がいます。しかし、こんなやり方では人はついてくるはずがありません。形式的に従う人もいるかと思いますが、心は離れていくと思います。そして離れないようにさらに権威を持とうとして肩書でがちがちに固める人やエラそうな態度で周りに接していくと歯止めが利かなくなってきます。皆さんの周りにもこんな人がいないでしょうか?
うぬぼれ屋の男のように、自分の都合のいい言葉しか耳に入らず、自分をもっと見てほしい・もっと褒めてほしいと思い、外見ばかりを変えたり、奇抜な服や行動を行って人の注目を浴びるような人もいるかと思います。最近は本当の自分を主張するように外見を個性的にする人も多いように感じます。しかし、このうぬぼれ屋の男は拍手をすると帽子を取ってお辞儀をする事を繰り返すだけで、他の事はしてくれないし自分に都合のいい言葉以外は耳に入らないような男です。自己顕示欲ばかり高くて中身の価値が伴わない人を表しているのかなと感じますが、皆さんの周りはどうでしょうか?
酒飲みの男は、酒を飲むことが恥ずかしいと言いながらお酒を飲んでいます。言ってることとやっている事が矛盾していますね。欲求に勝てないのか、中毒になってしまっているのか、それとも、大人になると本音と建前というように心と体を切り離したように生きてる人が多いという事を表しているのでしょうか?
ビジネスマンはとにかく忙しいと口に出しており、やっている事は自分が星をすべて所有してその土地を運用してお金を稼ぐという計算です。しかし、星を所有するという事は可能なのか、運用自体どうすればいいのか、お金を増やしてどうしたいのかこのビジネスマンは考えていません。ただ星を所有出来たらこんだけお金が増えるから、また星を買って増やして…と考えているだけです。大人になると、もし〇〇〇なら稼げそう、お金持ちになれるかもと考える人は多いかと思いますが、実際行動しない人も多いと思います。それは何もしていない事と一緒です。何もしてないのに忙しいのかと思われないように計画性のある行動を心がけたいですね。
点灯夫は規則を重んじる人でした。以前は1日に1回夜になると明かりを灯し、朝になると明かりを消せばよかったですが、この男の星は1分ごとに朝と夜が来るようになってしまい、以前と働く環境が異なっています。それなのに以前から行っている仕事内容をそのまま当てはめて眠れないほど働いているという状態でした。一生懸命仕事をこなしていると言えば聞こえはいいですが、誰の為の仕事なのか?何のための仕事なのか?目的を見失っているように私は感じました。私より前の世代は『仕事人間』の人が多い印象です。人よりも長く多くの仕事をこなす人が素晴らしいというブラックな事を求められていましたが、この点灯夫もそうする事が当たり前になっていて何も疑問に思わず流れで作業を繰り返すだけになっています。自分で考えて行動できる大人にならないといけませんね。
最後は地理学者です。この人は人の話から地図を作成する事を仕事にしています。しかし、この地理学者は自ら外の世界を見に行くことをせず、色々な冒険者から話を聞いただけで地図を描いています。世界を知る事が目的で地図を描いているはずなのに、自分で行くと時間やお金が無くなりますし効率も悪くなるのはわかります。地図を作る事は世界がどうなっているかを知る事が目的だったはずですが、いつの間にか地図を作る事が目標になっています。なんか大学に入ってやりたい事を学ぶのが目的だったのに、大学に合格する事が目的になっている。みたいな話だと感じました。いつの間にか目標がわからなくなることは、漫然と生きているとよくあります。自分の目標を時々確認して、答え合わせをする時間を作る事が大事だなと感じました。
この6人は大人になる程多くなってくるなぁと感じ、読んでいて少しはっとさせられました。効率を少しでも良くしたいし、数字で話をする事が大事だと思うし、何をするにもお金の事を考えてしまいます。指示待ちで言われた最低ノルマをこなしている方が楽に感じます。しかし、子供を見ているとそんな事は関係なく目の前の事に自分の意志で一生懸命に取り組んでいて、すごく楽しそうにしています。成功すれば嬉しいし失敗したら本気で悔しくて泣きじゃくる。大人になるとそんな事くらいで…と考えてしまいますが、最近は一つのことに真面目に向き合っているから心が反応するのではないかと考える様になりました。また、積み木やつなげて形を作るブロックを子供に見せられて『これなんでしょ~?』と時々難題を出されます。当たった試しがほとんどありません。そのたびに本書の冒頭で『ゾウを丸飲みした蛇』の事を思い出します。子供にとってそれは形以外の所も表現しているのかなと思い、理由を聞くようにしています。自分では想像できない突飛な回答が来るので楽しいです。子供には目で見えない何かをみる力が大人よりも優れているのかもしれないですね。
④地球での出会い
アフリカの砂漠に降り立って、最初にあったのは蛇でした。この蛇と話をしていき、『~中略~自分の星への思いがあんまり募ったら、君を助けてあげられる。きみを…』と王子さまに伝えます。
それから人間を探して砂漠を歩き出した王子さまは、砂や岩や雪の中を歩いてようやく1本の道路に出ます。道路の先にはたくさんのバラが咲き誇る庭園に行き当たりました。そこには5000本のバラがありました。自分の星のバラは、宇宙で1本しかないと自分で言っていたのでそれを信じていました。王子さまはまず、自分の星に置いてきたバラの心配をします。特別な存在だという事が違うとわかると、咳をしたり死にそうなふりをするだろうと考え、それに自分が合わせてあげないとと考えました。それから特別な花を持っていた自分は特別な存在だと思っていましたが、バラの花が特別ではないと知った王子さまは草の上に倒れて泣いてしまいます。
この順番でさらっと書かれていますが、まず王子さまは自分のバラの心配から入り、次に自分の事に考えが向いています。普通であれば自分の心配をする事が1番に来るはずだと読んでいて感じました。しかし、王子さまにとって気まぐれなバラに嫌気がさして星に残してきたけれど、今でも本当は大切に想っている。という心理が表現されていると感じ、読んでいてなんかグッとくるものがありました。そのあとすぐに自分の方へ考えが移って泣いていますが、この時は王子さまも自分の気持ちにまだ気が付いていない事を表現しているとこを描く順番で表現しているところがすごいと感じました。
泣いている時にキツネに声をかけられます。王子さまは気持ちを紛らわせるために遊ぼうと誘いますが、キツネは『遊べないよ。おれは飼い慣らされていないからね。』と断ります。
飼い慣らさるとは?という話になりキツネは『それは、絆を作るってことさ…』と答えます。
”いいかい、きみはまだおれにとっては10万人のよく似た少年のうちの1人でしかない。きみがいなくなくたって別にかまわない。同じようにきみだっておれがいなくてもかまわない。きみにとっておれは”10万匹のよく似たキツネの1匹でしかない。でも、きみがおれを飼い慣らしたら、おれときみは互いになくてはならない仲になる。きみはおれにとって世界でたった1人の、人になるんだ。おれもきみにとって世界でたった1匹の…”
と絆について話をしたのち、キツネと時間を共にして絆が芽生えます。もう王子さまとキツネは世界でたった1人の、たった1匹の関係となりました。それと同時に、またキツネに助言されます。『飼い慣らしたものには、いつだってきみには責任がある。』それは星に残してきたバラにも責任があるという事を言われていました。そして、王子さまはまた旅を続けます。そして、話の語り部である「ぼく」のいる砂漠に戻ってきたのでした。
ここまで読んで、王子さまはたくさんのバラと出会い、キツネの言葉に共感して星に残してきたバラに対して特別な存在だった気持ちが明確になり、星に帰る事を決意したのだと思います。バラも同様に王子さまを特別な存在と感じており、自分だけを特別に扱ってほしい気持ちや、自分が動けないから王子さまにあれこれ世話を焼かせて近くにいてほしかったのではないか、というバラの気持ちにも気が付いたのだと感じました。”肝心な事は目では見えない。だから心で見るんだ。”と最後にキツネから助言を受けて、王子さまは何度も繰り返します。忘れないように繰り返して言っていましたが、自分に言い聞かせてバラに対しての自分の気持ちを再確認していたようにも感じました。
私はこのキツネとのやり取りがこの物語の中で1番共感出来て好きな部分でした。物語の核心を突くフレーズも多く登場し、その言葉を自分に当てはめて考え読書が中断する事も多々ありました。子供向けでわかりやすく耳さわりの良いフレーズが多いですが、大人になって読み返すとその捉え方が大きく異なっている事に気が付きます。
以前読んだことがある方も、もう一度読むと新しい感覚で読み進める事が出来るのでここは是非読んで頂きたい部分です。
⑤王子様の旅立ち
ぼくと王子さまは砂漠で井戸を探したのちに、王子さまが蛇にかまれて死んでしまいます。しかし、これは事故などではなく王子さまが蛇に頼んだと推察できます。地球に来た時に王子さまに蛇は『私が触れば、誰でも自分が出てきた土地に送り返される』と話しています。
これは魂が天国に行き、復活できるというキリスト教の考え方が反映されているのではと考えます。王子さまも『星に帰るには体は重過ぎるから』と言っており、体という器を脱ぎ捨てて自分がいた星に帰ろうとしていたのだろうと感じました。私は宗教については詳しくわかりませんが、子供のころは蛇にかまれて死んでしまって、星になったんだな。だから星の王子さまって題名なのか…くらいに思っていました。
王子さまは置いてきたバラに対して自分の責任を果たすために帰ろうと決意をして、星に帰る手段として蛇にお願いをしたのだと思います。しかし、蛇にかまれれば体は死んでしまうという事はわかっていたはずなのに、自分の責任を果たすためにその決断が出来るのがすごい事だなと感じます。もし自分だったらと考えたときに、死後の世界などどうなっているかそもそもわかりませんし、その行動が合理的でない事もわかります。しかし、それは自分の気持ちに嘘をつく事に他なりません。王子さまはバラの事が1番大切にしないといけない。と気が付いて、自分の星に帰る手段を蛇から聞いてたのですから、王子さまは自分の心に正直に・迷いなく行動しただけなんだろうと思いました。そして自分はここまでの事が出来るのか…と考えさせられました。
⑥本書の名言3選
本書は会話形式で話が進んでいきますが、その中で心に残る言葉が多くあります。その中でも本書での核心をつく言葉や自分の生活する中でヒントになる言葉などがたくさん散りばめられているなと感じます。その中でも、私がグッと来た言葉の中から特に好きな言葉を3つを紹介し、その理由を書きたいと思います。
- キツネの言葉『ものは心でみ見る。肝心なことは目では見えない』
- キツネの言葉『飼い慣らしたものにはいつだって、きみは責任がある』
- 王子さまの言葉『砂漠がきれいなのは、どこかに井戸を1つ隠しているからだよ』
①『ものは心で見る』というのは、なんとなくわかりますし色々な作品でも言われるところだと思います。しかし、それが大人になってもできないし正解もわかりません。特に人間関係に関して言えば、人に合わせる事が多く本当の自分の意見が言えているか?これが本当に自分がやりたかったことなのか?など考えてしまいます。王子さまもバラの事が特別な存在だし好きだけど、バラの気まぐれな発言やわがままの本当の理由をみる事が出来ず、あとから後悔をするという事が描かれています。自分の実生活に当てはめても、1日のうちにいくつ本音が言えているのか?その場の人や状況に合わせた言葉を選んで自分をどれくらい押し込めているのか?私にとってはそんなことを考えさせてくれる言葉でした。皆さんは心で見る事が出来ていますか?
②『飼い慣らしたものへの責任』は、自分が関わったひとや人に対して必ず出てくるもので、この『飼い慣らす』とは時間をかけて関係を築き上げ『絆』を作ることだとキツネは言っています。絆というとすごく響きは良いですが、その数が多いだけ『責任』も増えると私は昔からなんとなく感じていました。私はこの絆よりも責任が重たく感じてしまい、関係を持つものや人が多くなるとその分そこに割く時間も増えて自分の為の時間が削られる感覚があります。また、今までの人生で1番の責任の重圧があったのは『結婚』と『子供』です。最初に断っておきますが、後悔をしてるという意味ではありません。ただ、結婚はその後のその人との時間を、子供は1人で旅立てるまでに関わる時間や教育に対しての責任があると思っており、周りからの「いつ結婚するの?」や結婚後の「子供は多い方がいいよ。作る予定は?」などその頃はその言葉が煩わしく感じていたなと思い返してしまいます。しかし責任を重く感じるのは行動する前がほとんどで、行動した後はその責任に対して自分なりにどうするかを考えて行動してきたし、これを読んで頂いている皆様もそうじゃないかなと感じます。今となっては結婚も子供に関しても選んで良かったと思っています。このブログも口で伝えるのが苦手な私が、将来子供に読んでもらえる時に本を通じて生きていく為の一助にしてほしいという気持ちから始めました。『飼い慣らしたものへの責任』はそれぞれの人が抱えている物だと思います。その責任をどうしていくかを考えさせてくれる重みのある言葉だと感じたので紹介しました。
③『砂漠がきれいなのは、どこかに井戸を1つ隠しているからだよ』という言葉は作中の言葉で私が1番好きな言葉です。これは砂漠の中で水を探している時に王子さまが言った言葉ですが、そんな状況でこの言葉を言えるのは王子さまの世界の見え方が主人公のぼくと違う点で、ぼくもその言葉に共感して砂漠がきれいだと感じる様になりました。要はものの捉え方がポジティブという事なのですが、どんなに悪い環境にいてもその環境からいい点を探す事がとても難しい事なのは今まで生きてきて感じる事です。特に大人になるにつれて良い面からみる事が少なくなっており、悪い所ばかりが見えてしまう事が多くなっている気がします。皆さんもそう感じる事はありませんか?私は根がネガティブ思考なので昔から物事を悪い方面から見てしまう癖があります。しかし、そういう見方をしていると本当に何をやってもネガティブな感情しか生まれないようになります。私の場合は根底に『自分なんか…』という考えが出てきてしまい自己肯定感が激的に低い人間でした。さすがにこのままではいけないと思いたくさんの自己啓発本を読みました。また、私は漫画が好きなのですが、漫画の作中に出てくる言葉に感情移入しやすく、「そういう考えが出来れば自分もポジティブになれるかもな」と思うと、好きなキャラの心に刺さる言葉をメモして、ネガティブな感情になった時に思い出したり読み返すなどしています。こういうことを繰り返していると、1つの物事に対して色んな視点から物を考えるようになれました。今ではネガティブな事の裏側にはポジティブに考えられる要素があると思えるようになりました。同じ事柄でも物の捉え方ひとつで世界の見え方は大きく異なってくることをこの言葉からも伺えるので、とても好きな言葉だし、子供にも読みやすいと思うので薦めたい作品の1つになりました。
⑦まとめ
本書は子供向けに書かれていますが、大人が読んでも面白いし学びが多い書籍だと感じました。また、第2次世界大戦中に書かれており1943年にアメリカで出版された古くからある本にも関わらず、今でも多くの出版社で再販されるなど人気が高い作品です。日本でも1953年に岩波書店から出版されています。世界でも人気が高く、200以上の国と言語に翻訳され、世界中での発行部数は1億4500万冊以上と言われています。
読んだことがある方も多いかと思いますが、本書は哲学にも近い考えもできるため、読み手によって受け取り方が変わる本でもあると思います。今回は私の視点から紹介しましたが、他の方がどのように解釈しているのかも興味が出るところなので、本好きの方がいたら是非話をしてみたいなと思います。
今回のまとめは
- 本当のことは目には見えない。心で見ることが大切。
- 大人になるにつれて、目に見えるものでしか判断できなくなってしまう。
- 大切だと思えるのは、時間をかけて絆が生まれているから。
- どんな環境にいても、自分の捉え方で世界が違って見える。
ということがこの作品から感じられることだと私は感じました。そしてこれらの考え方は普遍的なものだからこそ、色々な国や各世代に読まれてなお人気があるのだと感じます。
私も久しぶりに読み返したい本に出会えたなと感じました。またなにか悩んだ時などに読み返したいと思います。
今回も長文になりましたが、ここまで読んで頂きありがとうございました。