健康の本

Books#7 『自然治癒力が上がる食事』

今回紹介する本は、歯学博士で小峰歯科医院理事長の小峰一雄先生が書かれた『自然治癒力が上がる食事』という本です。

この本は一言でいうと”虫歯は削らずに予防と治療ができる”という事を教えてくれる本です。

虫歯になると歯科医へ行って悪い所を削ったり、神経を抜いたり、歯を抜いたりするなどで治療を受けるのが一般的だと思います。私もつい最近歯医者に行って治療を受けていました。しかし、本書では虫歯の初期段階では自分で食べる物を気を付けるだけでも歯は治っていくというのです。

歯医者に行くと虫歯の初期でも歯を削って、そこに詰め物で蓋をして治療をおこなうという流れが普通かなと思いますが、小峰先生は”歯を削らない治療”をする事を推奨されている歯科医の先生です。しかも、その治療はほとんど痛みを感じない、まるで夢のような治療だという事です。

もし歯の治療で歯医者に通っている方や、これから治療に行く予定の方も、こちらの本の内容を知る事で今の治療内容であっているのか考えるきっかけを与えてくれます。

本書の内容で特に私が重要だと思ったところや役に立つ知識だと思った部分をかいつまんで紹介していこうと思います。

目次

  1. 身体と歯はつながっている
  2. 抜歯・抜髄が病気を引き起こす3つの原因
  3. 歯磨きよりも食生活が大切
  4. まとめ

①身体と歯はつながっている

昔は虫歯や歯周病などの病気は口の中だけの症状だと考えられていました。治療を受ける側の私たちもその認識の方が多いと思います。しかし、近年では虫歯や歯周病は全身の病気になるという話を耳にすることがあります。例えば、内臓疾患や整形外科的な手術をする時に、虫歯がある場合はそちらの治療からするように言われる事があります。これは、虫歯の菌が体の他の部位にも影響を与える可能性があるからです。

それを証明した研究が、アメリカのロマリンダ大学のラルフ・スタイマン博士とジョン・レオノーラ博士が発見した【象牙質内の液体移送システム(Dentinal Fluid Transport)】(以下DFT)という現象です。この現象が本書の肝となる言葉なので覚えていてください。

歯の表面は硬いエナメル層で覆われていて、目には見えないですがエナメル小柱間という無数の穴が開いています。エナメル質の内側にはやわらかい象牙質という部分があり、その中央部には歯髄と呼ばれる歯の神経が通っています。今回発見されたのは、象牙質内の液体移送で、歯の隅々まで液体が流れているという物でした。

この実験ではネズミで行われたもので、ネズミのお腹に”放射性同位元素”という物質を注射して、それが体内でどのように流れるかをみた実験です。結果は、その物質が6分で象牙質エナメル境まで達し、1時間もしないうちにエナメル小柱間から歯の表面に出てくるのが確認されました。

この事から、歯からは常に液体がしみだしている事がわかりました。という事は、歯は口の中にある単なる硬い物質という訳ではなく、隅々まで影響が行き届く機能を備えた”臓器”のような存在であるという事です。

DFTが持つ2つの機能

DFTには主に2つの機能があります。

  • 歯の修復
  • 菌から歯を守る

この2点です。歯は骨や細胞などと違い一定の周期で入れ替わるという様なターンオーバーの機能はありませんが、DFTが必要な栄養を運んでくれることで、歯の傷が修復されたり黒ずんだ歯を液体がクリーニングしてくれるおかげである程度白い歯を保つことができている様です。

そして、歯周病菌に対しても力を発揮してくれます。歯周病菌が入り込んだ時にもDTFに含まれている免疫細胞によって菌が退治してくれるおかげで、歯周病にならないでいられているのです。

以上の事から、DFTは歯にとって重要な役割を果たしていると言えますね。しかし、このDFTはある事がきっかけで逆流が起こる事があります。すると口の中にいる無数の細菌が一緒に体内に流れ込んでいき全身に悪影響を起こしてしまう原因となります。これが冒頭で言っていた虫歯を直してから他の治療をするという事に繋がってきます。そのDFTが逆流してしまう原因についてみていきたいと思います。

DFTが逆流する5つのスイッチ

DFTが逆流するのは5つの原因があると書かれています。その原因とは

  1. 砂糖の摂取
  2. ストレス
  3. 運動不足
  4. ビタミン・ミネラル不足
  5. 薬剤の服用

の5つです。すべて紹介すると情報量が多くなるので、ここでは”砂糖の摂取”を中心に解説をしていこうと思います。

虫歯になった方の多くの方が”甘いものを食べると虫歯が痛む”という経験したことがあると思いますが、この症状こそまさに砂糖がDFTの逆流スイッチを起動させたために起こる事なのです。逆流が始まると、口の中の細菌が一緒に体内に入っていき歯の神経を刺激するために痛みを感じてしまいます。なので虫歯予防の為に必要なのは砂糖を一切摂取しない『シュガーカット』や、砂糖の量を減らす『シュガーコントロール』が基本となってきます。

小峰先生は、まずは2週間シュガーカットを実践する事を勧めています。そうする事で2~3日で歯の痛みは治まって進行はストップします。そこからはシュガーコントロールで痛みや進行を抑えられるという事です。

先ほど紹介した逆流スイッチは他にも4つありますが、この砂糖の摂取こそがDFT最大の原因だという事は覚えておいてください。

また、原因の一つにストレスもありましたが、これについてもシュガーコントロールが有効であると書かれています。砂糖を日常的に摂取している人の脳は酸素不足となっており機能が低下している状態です。やる気・幸せを感じさせてくれるセロトニンやドーパミンというホルモンが分泌されにくくなります。甘いものを食べると一時的な幸福感が得られます。しかしその効果も長く続かない為、そのあとは不幸な気持ちが続きストレスを感じてしまうという事です。

実際私は本書を読む前から健康本をいくつか読んで1日1食の生活をしています。その前はご飯をお腹いっぱい食べたりお菓子も好きなので間食として食べていました。生活の上では好きなものをたくさん食べれて幸せだったはずなのですが、当時は妙に落ち込んだりイライラしたりすることが多かったと思います。しかし、食事量を減らすことで間食や炭水化物を食べる量が極端に減った結果かわかりませんが、以前よりも頭がすっきりした感覚や精神状態が安定しているという実感があります。本書を読んで、糖質が原因だったのかと納得できました。

そして運動不足やビタミン・ミネラルを摂取するという事は、血糖値との関係があるのかと思います。虫歯のなりやすさは血糖値とも大きく関係があり、血糖値が急激に上がる食事をするとDFTの停止や逆流が起こりやすいため虫歯になってしまうようです。

血糖値をあげない食事方法もいくつかあります。

  • ホールフーズ(全体食)を食す:全体食とは『食材すべて』という意味で、例えば白米ではなく玄米、果物や野菜は皮ごと食べるなどです。
  • GI値の高い食材は避ける:GI(Glycemic Index)値とは食材が血糖値を上げやすいかどうかの指標となる値です。一般的に数値が60以下なら血糖値を上げづらい食品という指標になります。ここでは紹介しきれない為、興味がある方は本書を手に取ってみて下さい。
  • 脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)を摂取する:血糖値を急激に上げない為には大量のミネラルが必要になる。脂溶性ビタミンにはミネラルの吸収と調整をしてくれる役割がある。ミネラルが働きやすい環境を作る為には脂溶性ビタミンが必要になる。
  • 食事の最初に野菜(食物繊維)を摂る:食物繊維には血糖値の上昇を抑えてくれる効果がります。食事の順番に気を付けるだけでも血糖値をある程度コントロールできるので、いきなり炭水化物(糖質)から食べないようにしましょう。
  • 食事回数を減らす:現代は1日3食が基本ですが、日本人が1日3食になったのはここ100年以内の話。それ以前は1日1食または2食程度でした。食事の回数=血糖値が上昇する回数、という事になります。それに伴いインシュリン分泌回数が増えます。このインシュリンが増えた血糖値を抑えようと大量に分泌されると体内では低血糖状態でフラフラな状態になります。すると、さらにお腹が空いて下がった血糖値を補おうと炭水化物などの糖質を欲してしまうというスパイラルに陥ってしまいます。急に食事回数を減らすのは難しいという方に著者は、無理に回数を減らす前に空腹を感じたら食事をとる様にすることを推奨されています。
  • 断食をしてみる:本書では週に1日程度の断食もオススメされています。効果としては先ほど書いたインシュリンを抑える・肥満予防・がん予防など色々な効果があります。断食をすると体では不必要な細胞を壊してその細胞の栄養を取り込もうとする【オートファジー】という働きが起こります。この体に不必要な細胞というのが余分な脂肪やがん細胞です。ただし、これはあくまで予防の範疇になるので、実際にがんを患っている方が行うとかえって病気の進行を速めてしまう危険もあるという事です。病気を持っている方はまずかかりつけのお医者さんに相談して断食をしても良いか検討してみて下さい。
  • よく噛んでゆっくり食べる:急に普通の事が出てきたと思う方もいたかと思いますが、実は日本人は早食いの方が多いと著者は書いています。よく噛んでゆっくり食べる事がいいと頭でわかっているけれど実際できている人はどれくらいいるでしょうか?よく噛んで食べると口の中で唾液に含まれるアミラーゼが消化の促進や分解を助けてくれます。そうすると栄養素がまんべんなく吸収しやすい状態となりミネラルやビタミンも吸収しやすく血糖値の急上昇を抑えてくれます。

以上が血糖値の急上昇を抑える食べ方となります。これを見た後からは私は食事で使う野菜はなるべく皮ごと調理してみたり、食事では必ず野菜から食べる様にしたり、食事を口に入れたら箸をおいて最低でも20回程度は噛んでから飲み込むなど意識して取り組んでいます。食事は1日1食なのでそこは実践できていましたが、1回の食事で食べる量も以前より少し減り体調面が良くなった事や、歯がしみたり歯茎が痛むことなどが減ったなどの実感もあります。もし歯や歯茎が痛む方はなにか1つだけでも実践してみてはいかがでしょうか?

②抜歯・抜髄が病気を引き起こす3つの原因

歯医者に行く中で、【歯の神経を抜く】治療を受けた事がある人も多いかと思います。私も治療に通う中で「歯の神経を抜きますね」と言われ何本かの歯の神経を抜いたことがあります。歯のプロの先生が言うから、抜いたほうがいいと思い何も考えず承諾していました。しかし、小峰先生は抜髄に関して『痛みを取るには神経を抜いてしまえばいいという”対症療法”でしかなく、”原因療法”ではない』と言われています。神経を抜く治療は、後々さまざまな弊害が出るためあまり推奨しないということです。

1度歯や神経を抜いてしまうと2度と元に戻らない事や色々なトラブルが連鎖的におこると書かれています。またDFTによって歯は全身と繋がっていますから、『抜く』治療によって全身への影響も懸念されます。その中でも大きく3つの病気の原因が問題となりやすく、怖いなと感じましたので、説明していきます。

  1. 歯性病巣感染
  2. ボーンキャビティ
  3. 歯原性菌血症

この3つですが、初めて聞く言葉で難しそうな印象です。今からなるべくわかりやすく解説していきますね。

①歯性病巣感染

これは歯の神経を抜いた時に起こる感染症です。これは神経を抜いた歯の中に細菌が繁殖し、この細菌が体中に感染していくという病気です。

神経を抜くと歯の根に血液が流れにくくなり象牙質の中にある『象牙細管』という細い管の中に細菌が住み着いてしまいます。血が流れてこないと免疫細胞が来てくれないという事になり、細菌は増殖し放題な環境となってしまいます。爆発的に増殖したら全身にその細菌が巡っていくことで各臓器に感染し炎症を起こしてしまいます。

神経を抜くと治療後は痛みも治まり良くなった感じになるものの、時間が経過するとともに細菌が増えてしまう事です。神経を抜くとほぼ確実に病巣感染を起こしてしまうと書かれています。

何本か歯の神経を抜いている身としては、もう取り返しがつかないのでしょうがないですが、今後歯医者に行ったときに神経を抜く治療はなるべく避けてもらうように歯医者の先生に交渉しようと思います。知らないと今後もなんの疑いもなく治療を受けてしまう所でした。

②ボーンキャビティ

これは抜歯した際に起こるもので、特に矯正・親知らず・事故等で折れた歯などを抜歯する際に多いようです。

歯の根は直接歯茎の骨とくっついているわけではなく、歯の根と歯茎の骨の間にある『歯根膜』と呼ばれる繊維でくっついています。この歯根膜が歯を抜いた時に歯茎の所に残ってしまうと、その周囲の骨は【まだ歯が存在している】と勘違いをして、その歯根膜を保護しようとして周囲を強力な繊維で包んで歯茎の中に空洞を作ってしまいます。この空洞が『ボーンキャビティ』と呼ばれるものです。

このボーンキャビティの中は栄養豊富で細菌にとっては最高の温床となります。そしてこの中で増殖した菌や毒素が全身にまわって各臓器へと送られるという流れになります。

しかも困ったことに、このボーンキャビティは非常に小さい事が多く、レントゲンなどでもなかなか発見する事が難しいのが現状のようです。アメリカではボーンキャビティを作らないような抜歯方法が行われている様ですが、日本ではそもそもボーンキャビティに対する認識が乏しく、ほとんど問題視されていないという事です。

ちなみに、ボーンキャビティの治療には今のところ外科的手術を行って取り除くしかないようです。

③歯原性菌血症

こちらの病気は、口の中の傷口から口腔内の菌が体の中に入り込んで悪さをするものです。

歯原性菌血症の恐ろしい所は、入り込んだ細菌などが血管壁内に粥状アテロームと呼ばれるコブを作って動脈硬化を起こしたり血栓を作って心筋梗塞や脳卒中などのいわゆる『血管が詰まる病気』になりやすくなります。

ちなみに日本赤十字社のホームページには、献血できない人として「3日間さかのぼって歯科クリニックに行った人」を挙げています。これは歯科治療を行った人は歯原性菌血症を起こしている可能性があると認識されているからです。

抜いた歯と病気になる臓器は決まってる?

今までの話から、歯と全身はつながっている事がなんとなくでも理解して頂けたかと思います。ここで著者は、長年の臨床経験から抜歯や抜髄した歯の場所と病気になりやすい内臓疾患の相関性が高いことをあげています。大人の歯は上顎・下顎16本ずつの合計32本が基本的に生えており、そこに+αで親知らずもある人もいるかと思います。

全ての歯にそれぞれ対応する内臓がありますが、すべて紹介すると膨大な量になってしまうので、ここでは1番抜歯・抜髄される可能性がある下あごの奥歯(下顎第一大臼歯)と親知らずについて紹介していきます。

下顎第一大臼歯は奥歯の中でも一番初めに生えてくるため虫歯になりやすいと言われており、治療を受ける可能性もおのずと高くなる歯と言えます。

この歯を抜歯・抜髄した患者さんには大腸がん・大腸ポリープ・便秘・下痢・など大腸にかかわる病気や症状を発症している事が多いようです。特に大腸がんの患者様のほとんどは下顎第一大臼歯を治療さしている人が多かったとの事です。

そして親知らず関してですが、実はほとんどの臓器とつながりがあると著者は言われています。日本ではこの親知らず、痛みが出るかも…抜きましょうとなりやすいですが、実は全身の臓器とのつながりがあるので、何も問題が無ければ抜かない方がいいです。抜かれる原因としては、一番奥に生えるため歯を磨きにくく虫歯になりやすいということ、まっすぐ生えなかった場合に痛みやすいなどの理由があげられます。

とここまで歯と全身の関係を書いてきましたが、神経や歯を抜くという治療にならないように日々の予防をしていくことが大切だという事がわかりますね。では、予防と言って食べたら歯磨きを頑張ろうと考えた方は少し待ってください!実は歯を健康に保つには歯磨きも大切ですが、それ以上に何を食べるかも同じくらい大切になってきます。次の項目からは食事について少し触れていこうと思います。

③歯磨きよりも食生活が大切

小峰先生はなるべく歯を削らないで治療をする事を念頭に、臨床に出ています。削る治療によって歯の劣化が進む懸念もあるし、抜歯・抜髄で歯周病となる可能性も高まるからです。

虫歯自体は適切な管理をする事で、痛みや進行を抑えて自然治癒を促すことができるという事で、『小峰式完全予防歯科プログラム』を確立し、多くの患者さんに治療を行ってもらい虫歯の自然治癒を対戦してもらっているという事です。

では実際この治療はどのようなないようなのか、ざっと見ていきたいと思います。

  1. 唾液のpHを測定し全身の健康状態を把握する(酸性・中性・アルカリ性のどれなのか確認)
  2. 口腔内を視診し、歯や歯茎の状態を確認
  3. 虫歯のレーザー診断
  4. 虫歯がある場合、虫歯の神経状態(炎症の状態)を確認
  5. 歯周病の検査
  6. 各検査結果から個々人における食事指導

以上の流れで治療を行っている様です。この中でも唾液と虫歯の関係や削らない治療方法、そして食事に関しての話を少し掘り下げて紹介していこうかと思います。

虫歯予防にはpHと唾液の量が重要

虫歯の進行や予防に大きな働きを見せてくれるのが唾液です。唾液には抗菌作用があるので、虫歯菌と呼ばれる”ミュータンス菌”や”ラクトバチルス菌”の活動を抑えてくれます。

また、虫歯は虫歯菌が発生させる酸が歯を溶かして中へと進入していくというメカニズムです。この酸を中和するのも唾液の働きとなってきます。唾液に含まれるミネラルが歯の再石灰化を助けてくれるようです。

しかし、この話は唾液のpHがアルカリ性であることが前提です。何らかの理由で口腔内が酸性に偏っている場合は、逆に虫歯になりやすい状態となっているという事です。なのでこのプログラムでは口の中のpHを最初に測る所から始まるのですね。

実際歯医者に行くと、口の中を見て、虫歯が歩かないかの確認をされるだけでこのようなpHを測定するなんてことはしたことがない方がほとんどだと思います。

そしてpHが酸性に傾いている人は、活性酸素を打ち消す力も弱く自然治癒力も弱い傾向にある為病気の人が多いという事です。

唾液は虫歯の予防と全身のバロメーターを測るうえで大切な指標になってくる事がわかりました。そんな唾液ですが、色々な原因で分泌量が減ってしまう事もわかっています。唾液が減ると口腔内をアルカリ性にしたり抗菌作用が減ってしまうため、虫歯予防の観点からも避けたい事ですね。唾液量が減る一番の原因は薬剤を使用する事だといいます。

薬剤については先ほどDTFを逆流させる原因としても紹介しましたが、唾液が出にくくなる原因にもなります。多くの薬には”口渇”という副作用があります。読んで字のごとく口が渇くようになってきます。特にステロイド剤(副腎皮質ホルモン薬)、向精神薬(精神安定剤・睡眠薬など)、降圧剤(高血圧の薬)は唾液が出なくなるものとして有名です。

なぜ薬を飲むと口が渇くのでしょうか?それは、薬は体の病気を治してくれるものという顔と、毒になってしまうという顔の両方を持っているからです。体は有害なものが入ってくると水で薄めて排出したいという機能が働いて、体内の水分が血液に集まってきます。なので、もっと水を取ってほしい!という体の反応として口が渇いてくるようです。

また、同じような反応で塩や砂糖を摂りすぎると血液中にミネラルバランスが崩れたりブドウ糖が増えすぎる等の理由で体内の水分が血液に集中するため、全身の水分が足りなくなり口が渇いてきます。

ちなみに水分補給では利尿作用が高いコーヒーや紅茶はオススメできないです。飲んだらその分尿から出て行ってしまうからです。先生が進めているのは”白湯”になります。理由としては温かいお湯は胃腸の機能や免疫を高めてくれる効果がある為です。内臓がが最も働きやすい温度は体温なので、それよりも少し高い温度の白湯が良いようです。逆に冷たい水は消化システムが停止してしまうので、季節には関係なくキンキンに冷えた飲み物は胃腸に対して優しくない飲み物になるのでやめた方がいいようです。

削らない治療?ドックベスト療法とは!

小峰先生は歯を削らず、ほとんど痛みがない治療を実践していると冒頭で紹介しました。その治療方法が『ドックベスト療法』という治療方法になります!

ドックベスト療法とはアメリカで開発された治療方法で、ドックベストセメントという薬を使用していきます。この成分は銅2%と鉄1%、そして複数のミネラルで構成されており虫歯の穴に詰める事で虫歯菌を死滅させて歯の再石灰化を促してくれるものです。治療の時間は10分程度で、フタで密閉して菌の侵入を防げたら治療完了!実にシンプルな治療です。

施術後すぐに痛みは治まり虫歯の進行も止まりますが、虫歯が治ったわけではありません。セメントでフタをして密閉した環境状態で1~2年間じっくり時間をかけて再石灰化して治っていく、とても長い期間治療が続く事になります。その治療期間中に重要なのは、シュガーコントロールまたはシュガーカットを行う事です。そこさえ乗り越えれば虫歯が自然と治っている、痛みを伴わない夢のような治療となります。

ですが、甘いものが好きでついつい食べたくなる方も多いと思います。私も甘党でついつい食べてしまうので、まったく糖質を摂らないシュガーカットはなかなか難しいなと思います。しかし、シュガーコントロールであれば自分の生活の中に食べない習慣を作って糖質を減らす工夫や食べてもいい条件などを設けるなど自分の出来る範囲でのルールを作る事である程度は可能だと思います。出来る人は試してみて下さい。

歯周病と食事との関係

最後に、歯周病についてです。昔は歯槽膿漏ともよばれていましたが、これは”歯茎から膿が出てきている状態”で病名ではありません。

最近までは歯周病は細菌感染症と考えられており、原因とされるAA(アクチノバチスル・アクチノマイセテムコミタンス)菌とPG(プロフィロモナスジンジバリス)菌の多くは人間の口の中にいます。しかしその中でも、歯周病を発症する人としない人が存在します。という事は、歯周病となるのは菌だけが原因ではないという事になりますね。アメリカの歯周病学会では歯周組織の細胞関係に関係があると言っている様です。歯周病学会があげた原因として、炭水化物やカルシウムの摂りすぎ、マグネシウムやオメガ3脂肪酸の摂取不足などがあげられています。それぞれの原因をみていきましょう。

炭水化物の過剰摂取

アメリカの歯周病学会がアンケート調査を実施したところ、歯周病の方の多くが『炭水化物大好き』という特徴があることがわかりました。ちなみに治療する時でも、炭水化物をたくさん摂っている人は、歯の周りにべっとり歯垢が着くためすぐにわかるそうです。

だからと言って、炭水化物を摂るなという事ではありません。必要以上の炭水化物を摂る事で歯垢になるようですので、適量は摂取しても大丈夫です。目安としては、炭水化物を摂取後30分後に歯垢がついていたら、それは炭水化物が体の必要量よりも多く摂取していたという事になるようです。何事もほどほどが良いという事ですね。

カルシウムの過剰摂取

カルシウムと聞くと骨を丈夫にしてくれるものや、イライラするのはカルシウムが足りてないなど体や心には色々とカルシウムが必要であるという認識を持った方が多いかと思います。たしかに若い時は体の成長に必要な物なので間違ってはいません。しかし、大人になって体の成長が終わった後は、それほど必要ではなくなり、摂りすぎるとかえって危険となるミネラルなのです。

カルシウムは摂取するといったん血液中に入り込みます。しかし血液には濃度を一定に保とうとする機能があるので、過剰に取り込まれたカルシウムは別の所に運搬されます。すると組織や臓器内に運ばれたカルシウムは集まって石のように固まってしまうという現象が起こります。いわゆる”異所性石灰化”と呼ばれる現象です。場所によっては非常に厄介なものになり、脳だとアルツハイマー型認知症に、目の水晶体に入れば白内障に、歯の中で石灰化が起これば歯石となり歯周病の原因になります。

年を重ねると骨粗鬆症が心配だからと乳製品を多くとるなどする方もいますが、実はカルシウムを摂りすぎる事での弊害に気が付いていない方も多いと感じました。短絡的に考えて1つの物だけをたくさん摂るだけではなく、バランスを考えて適量摂取できるように心がけましょう。

マグネシウムの摂取不足

先ほど紹介したカルシウムは自力で体外に出る事が難しいので、体内のどこか別の場所に集まって異所性石灰化する事を言いました。しかし、マグネシウムと一緒であれば外に体の外に出す事が出来るみたいです。なので、カルシウムを摂取した時は合わせてマグネシウムを体内に取り込むことで、余分なカルシウムを体にため込む心配が減ります。ちなみにマグネシウムを多く含む食品は海藻類・豆腐・納豆・ナッツ類に多いようです。

身近な所でいえばわかめスープみそ汁冷ややっこ納豆御飯ナッツ類はカボチャやヒマワリ種、アーモンドなどもマグネシウムが豊富だと言います。どれも難しい料理ではなく、ナッツ類は持ち歩いて間食として食べるのにも向いています。1日のどこかの食事でこれらを食べる習慣をつければカルシウムの過剰摂取の問題は解決できそうですね。

オメガ3脂肪酸の摂取不足

脂肪酸は主に油の中に含まれるもので、動物性・植物性の油があります。種類はたくさんあってそれぞれで特徴があるのですが、今回はLDL(悪玉)コレステロールの値の上昇を抑えてくれる不飽和脂肪酸について説明します。

オメガ3の不飽和脂肪酸には抗炎症作用(炎症を抑えてくれる作用)があり、歯周病予防や治療に有用です。アメリカでは20歳以上の9182人を対象とした研究で、オメガ3脂肪酸の摂取量が高いグループほど歯周病になりにくいという結果が得られているという結果があります。

しかし、日本で出回っている油はオメガ6脂肪酸が入っている物が多く、このオメガ6脂肪酸は炎症作用(体の中に炎症を引き起こす反応)が強いので、摂りすぎると体の不調を招いてしまう可能性が高いです。

ちなみに不飽和脂肪酸には3種類あります。それぞれ簡単に説明します。

  1. オメガ3脂肪酸:α-リノレン酸、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)があり、主にえごま油・亜麻仁油、サチャインチオイル、青魚などの魚油、くるみなどに多く含まれている。他の脂肪酸よりもLDLコレステロールの増加を防ぐことや血中の中性脂肪を低下させる、血栓を作らないようにするなどの作用が強いため、特にオススメします。注意点は、酸化しやすいため加熱調理は避けた方が良いです。なるべくそのままで、サラダなどにかけて食べる方がオメガ3脂肪酸の作用を供述できます。
  2. オメガ6脂肪酸:リノール酸、γ-リノレン酸と呼ばれるもので、大豆油、ごま油、紅花油、グレープシードオイル、コーン油などがある。摂りすぎで炎症症状を悪化させる恐れがあるので、注意が必要です。
  3. オメガ9脂肪酸:オレイン酸、パルミ、トレイン酸と呼ばれるもので、オリーブオイル、菜種油、アーモンド油、椿油などがある。

脂質の話は、それだけで1つの記事になる程奥が深いのでここでは紹介しきれません。また別の機会に脂質のお話をできればと考えていますので、もし興味があればそちらの記事も読んでみて下さい。

④まとめ

今回は歯と全身とのつながりや、虫歯の予防・治療方法などを中心に紹介しましたがいかがでしたか?歯は食事を楽しむうえで大切な臓器であるという事が今回読んでいて改めて実感しました。特に歯が痛くなるメカニズムや普段歯医者に行って行っていた治療が本当に正しかったのか?自分で口に入れる物に注意すれば虫歯を予防出来る事や治すこともできるという事など、学びが多かったなと感じます。本書の内容を簡単にまとめてみますと・・・

  • DFTによって歯と全身はつながっている。
  • それぞれの歯と繋がっている臓器には違いがあり、治療によってその臓器にも影響が出てしまう
  • DTFを逆流させない事が予防になる。
  • シュガーコントロールとシュガーカットが治療の第1歩となる。
  • 血糖値をあげない食事が虫歯予防にもつながる
  • 抜歯や抜髄などの治療が、歯性病巣感染・ボーンキャビティ・歯原性菌血症などの原因となる。なるべくなら残す方向で治療した方が良い。
  • 口の中のpHによって虫歯になりやすいかどうかがわかる
  • 歯を削らずに治す治療”ドックベスト療法”がある

こんな感じでしょうか?しかし、本書ではまだまだ紹介しきれていな所もたくさんありました。どこの歯がどの臓器と関連があるのかを分かりやすく図で紹介してくれていたり、歯の状態とリウマチとの関係であったり、歯の神経にレーザーを使う事で削らずに神経に作用する治療があったり、歯の治療で普段から使用されている麻酔薬の実は怖い作用、食事治療のの応用で、糖尿病やうつ病、がん治療などにも一定の効果があるなどたくさんありました。

もしこの記事を読んで本書の内容をもっと知りたい方は、一度本書を手に取って実際に読んで頂く事をおススメ致します。

今回はこれで終わります。最後まで読んで頂きありがとうございました。

ABOUT ME
KENP
30代で2児の父。子供が誕生してから、自分の一般常識や知識の低さに焦りを覚えて読書をするようになる。読んだなかで将来子供の為になりそうな本を紹介したいと考えブログを立ち上げる。年間読書20~30冊くらい。 趣味:読書・麻雀(オンラインゲーム)